新年早々、日本の自動車業界にビッグニュースが相次いだ。4日にはトヨタが21年のアメリカでの自動車販売台数で初めてGMを抜いて首位に立ったと伝えられ、5日には厳密には自動車業界の企業ではないが、ソニーグループがEVの新会社の設立を発表。ソニーでは2年前にSUVタイプのEV車のコンセプトを発表していたので、本格参入となる。4日の東京証券取引所の大発会は、4年ぶりに前年終値を500円以上も上回り、その中でもトヨタや日産などの株価が好調だ。
と、日本の自動車業界に関する朗報が相次ぐが、これらに比べて地味なニュースながら、日本の自動車業界が今年を迎えるに当たって相当な緊張感で臨む姿勢が窺えるニュースもあった。
「5日に日本自動車工業会(自工会)は会長の豊田章男氏の年頭のメッセージを公開しました。その中、昨年に始まったカーボンニュートラルや全自動車産業が対応を迫られるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)について、アメリカのオバマ大統領の有名セリフの『Yes we can』よろしく、日本の自動車産業従事者550万人が行動を共にすれば『私たちは、できる』とのメッセージを発したのです」(経済ジャーナリスト)
こういった強いメッセージを発するには前段があって、自工会は昨年11月18日に22年にスタートさせる新体制について発表したのだが、それまでは2期までだった会長職を豊田氏でさらに2年延長し、それまでは4人体制だった副会長も6人に増やすとしていたのだ。
「新体制は異例づくしのものですが、会長職の延長は必勝を期すということでしょう。また副会長の顔ぶれを見ると、乗用車で日産とホンダ、商用車でいすゞ、軽でスズキ、二輪でヤマハと、本来は競合する他社のトップが納まっていてこれも類例がありませんが、こちらはオールジャパン体制で望まないとこの激変の時代に生き残れないという強い危機感の現れでしょう」(同)
昨年はCOP21があって必ずしもEV一本槍に積極的ではなかったトヨタや日本勢は、EVで覇権を握りたい欧州の環境派から不興を買った。その後トヨタは大胆なEVシフトを見せはしたものの、それでもEV以外の選択肢を残した。
今年は世界的自動車業界の激変が予想されるが、ここまで来るともう国を挙げた本格的な経済戦争の様相まで呈している。
(猫間滋)