「あと1本」——。8月7日、五輪・野球競技は決勝戦を迎える。侍ジャパンはすでに決勝進出を決めているが、ここまで全試合で1番バッターを務めている山田哲人選手に、名誉だが、余計なプレッシャーが掛かりそうだ。
「今大会で侍ジャパン第1号アーチを放ったのは、山田でした」(スポーツ紙記者)
山田に本塁打が出たのは、7月31日のメキシコ戦。試合主導権を握る3ランアーチだった。この本塁打で、山田は金字塔を打ち立てた。WBC、プレミア12、五輪と国際主要3大会全てでホームランを打ったのだ。
また、このホームランは山田にとって、国際試合通算6本目。国際主要3大会での日本人本塁打数は福留孝介の7本がトップ。山田の6号アーチは松中信彦氏、中田翔に並ぶ2位タイの記録であり、次の決勝戦で一発が出れば、1位タイ。2本出れば、単独1位となる。
金メダル獲得に花を添えてもらいたいものだが、山田はメキシコ戦後の準々決勝・アメリカ戦、準決勝・韓国戦では一発が出ていない。
「山田、坂本勇人、吉田正尚らも打撃好調です。彼らに共通して言えるのは初球から狙っていくという、積極的な姿勢です」(球界関係者)
国際大会では対戦投手は「初見」となる。スコアラーなど裏方のスタッフが映像などを集め、投球スタイルの特徴を映像も見せながら説明するが、やはり、バッターボックスに立つと頭のなかで描いたイメージと異なる場合のほうが多い。データではなく、実力とセンスで勝負しなければならないケースも少なくないようだが、山田の打順は1番。つまり、対戦投手にたくさん放らせて、変化球の特徴などを味方選手たちに伝える役目もあった。アメリカ戦、韓国戦で“黒子役”に徹したのも、「あと1本」が出なかった原因だろう。
「田中将大投手に海外メディアからの取材申し込みが集中しています。『大谷翔平の活躍についてどう思うか』と質問され、その場では『アメージング!』と答えて笑わせていましたが、田中に限らず、チームの勝利のこと以外の質問をすると、みんなムッとします。金メダル獲得の使命感みたいなものを感じます」(同前)
山田もチームの勝利を最優先に考えているはず。決勝戦では、フルスイングのできる場面で山田に打席がまわってきてほしいものだ。
(スポーツライター・飯山満)