大谷翔平は日米野球ファンの「注目の的」であり、今季は投打ともに大活躍である。しかし、所属するロサンゼルス・エンゼルスはア・リーグ西部地区で最下位争い…。「トラウトとショウヘイ・オータニがいても、チームを救えないのか?」と、地元メディアはMLB最高プレーヤーとも称されるマイク・トラウトを加え、そんな皮肉めいた見出しも立てていた。
「次回5月11日の大谷の先発登板以降、エンゼルスの戦い方が変わってきそうです。その一例が『二刀流の起用法』です」(在米ライター)
同日の先発予定を指して、日本のメディアもこんな紹介をしていた。
〈1回1/3を投げれば、今季20イニングに達する。打者で20試合以上、先発出場(1試合3打席以上)の条件を既に満たしているため、現在の大谷の登録を「投手」から「二刀流」に切り替られる〉
この登録の変更は意義深い。変更されれば、エンゼルスを率いるジョー・マドン監督も自由に采配を振るうことができそうだ。
「今季、マドン監督は大谷を投手として先発させる際、指名打者を解除するリアル二刀流の采配も明言してきました。実際にその通りになりましたが、リアル二刀流の采配の弱点は、他の先発投手陣の登板間隔が不規則になること。そして、大谷の体力的負担です。『二刀流の選手登録』後、投手か打者に偏重した起用法になりそう」(同前)
大谷が活躍する度に「ベーブ・ルース以来」との報道もされているが、彼はメジャーリーグのルールも変更させていた。
渡米した2018年シーズン後だった。メジャーリーグ機構(MLB)と同選手会は協議し、二刀流選手の定義を明文化することを決めている。それが、20イニング以上の登板と、1試合3打席以上立った野手でスタメン出場数が20試合以上というものだった。
「マイナーには非凡な打撃センスを持った投手や、短いイニングなら投げられそうな野手がゴマンといます。彼らをメジャーに昇格させる際、野手登録して投げさせたり、投手登録したのに野手出場させたら、ゴチャゴチャになってしまいます。投手、野手の登録をシーズン途中で変えるのも良くありません」(同前)
大谷のようなれっきとした二刀流選手になるためには、まずは投手登録し、前述の条件をクリアしなければならない。大谷は昨季、トミー・ジョン手術の影響で公式戦では登板はゼロ。つまり、二刀流の「Two-WayPlayer」として選手登録するため、条件クリアする必要があったのだ。
「日本ハム時代、大谷は投手か野手のどちらかに偏重して起用されるシーズンもありました。その年は好成績をおさめています」(プロ野球解説者)
マドン監督は3度の最優秀監督賞に選ばれた名将だ。「Two-WayPlayer」の登録完了後、大谷をどちらかに重きを置いて起用する逆襲プランも温めているのではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)