連日の直接指導は、「来るべき日に備えて」ということだろうか。
昨シーズンで現役生活にピリオドを打った藤川球児氏がキャンプ初日から阪神キャンプを訪問し、後輩投手にアドバイスを送るなど精力的な動きを見せているのは既報通り。現在の彼の肩書はスペシャルアシスタント(特別補佐)。
「チーム運営、選手、スタッフへのサポートや助言を」と頼まれているので、後輩たちの面倒を見るのは決して不自然なことではないが、熱心に指導する姿はコーチそのものだ。
どうやら、藤川氏は試されているようだ。
「2月6日、二軍キャンプ地の高知県安芸市に移動するなり、真っ先に指導したのは石井将希でした」(在阪記者)
石井将は昨年9月に支配下登録を勝ち取った4年目の左腕。一軍登板は1イニングだけだが、「終盤戦の連戦の鍵を握るオトコ」とも称される“秘密兵器”なのだ。
「昨秋からサイドスローに転向しています。阪神救援陣には左投手が少なく、岩貞、岩崎に何かあってからでは遅いということでしょう。変化球の持ち球が多いので、サイドスローがはまれば、大きな戦力になるはず。変則左腕は一軍にはいないので…」(前出・在阪記者)
藤川氏は90分近くも石井将に付きっ切りになり、腕の振り方や体重移動まで熱血指導していたという。私服ではなく、ユニフォームを着ていたら、その活動はコーチそのものだ。
平田勝男二軍監督も若手投手を指導してまわる“藤川効果”を口にしていた。
「現役を退いた阪神OBが関西系のメディアで解説を務めるケースは多いですが、藤川はNHKの専属となりました。阪神サイドがNHKにプッシュしたとの情報もあります」(球界関係者)
原辰徳・巨人監督、与田剛・中日監督など、今もNHK出身の指揮官は少なくない。
及川、牧、望月など他の若手投手も“指導者・藤川”が声を掛けると、嬉しそうな顔を見せた。石井将が一軍に昇格して結果を残せば、その指導力も評価され、藤川待望論はさらにヒートアップしていくだろう。
(スポーツライター・飯山満)