アニメ映画「鬼滅の刃」が公開約1カ月にして233億円の興行収入を叩き出した。海外でも続々と劇場公開される運びで、台湾でも公開わずか17日目でアニメ作品の興収歴代1位を記録。12月にはお隣・韓国でも上映が開始されるが、それを前にして韓国の「鬼滅」ファンの一部からはマウントを取る動きが見られるという。韓国のアニメ文化に詳しいライターが解説する。
「『鬼滅の刃』のアニメはアジア各国でネット配信されていますが、韓国のファンが注目したのは、竈門炭治郎が回想するシーンで、父・炭十郎が神楽を舞う時に手にしていた刀(七支刀)。6本の枝刃がそなわった独特の刀が、韓国由来のものであると指摘したうえで、ネット上では《伝統あるヒノカミ神楽も韓国起源の刀なしでは舞えないということか》《やはり韓国あってこその『鬼滅の刃』の世界観》などと、韓国の文化とアニメをムリヤリ結びつけるようなコメントが殺到していました」
この「七支刀」にまつわるニュースが報じられると、日本のネット上では《何で彼らは日本の文化財に対して、すぐに自分たちが本家だと言いたがるんだろうか》《今度は刀の起源が韓国だと主張しているのか》などの声が上がった。
「七支刀は日本最古の神社のひとつ、奈良県天理市の石上神宮に伝わる国宝で、今も厳重に管理されています。その由来については諸説あるものの、4世紀ごろに朝鮮半島の百済の王から日本の『倭王』に贈られたものというのが定説となっています。その一方で、当時は倭の国が朝鮮半島南部を統治下に置いていたという説もあり、献上品なのか下賜品なのか、いまだ賛否分かれているところです」(歴史学に詳しいジャーナリスト)
大人気アニメのキャラクターが持つ「七支刀」が、再び論戦に火をつけてしまったのか。それでも、韓国側が一歩も譲らない理由に、その教育課程をあげるのは日本のメーカーに勤務する来日5年目の韓国人男性(34)だ。
「韓国で使われている教科書には『歴史の過程において、朝鮮の先進的な文化を未開国である日本に教えた』『百済の人々が日本を建国した』などと記載されています。韓国の教育では、常に朝鮮半島から日本へ一方通行で文明が伝わったと教わります。このような教育を受けたことで、今も豊臣秀吉の2度に渡る朝鮮出兵や日韓併合によって、朝鮮の文化財の多くが日本に略奪されたなどと信じている韓国の人は多いと聞きます。それゆえに、『日本のモノは韓国のモノ』とする風潮が野放しにされてきたとも考えられます」
こうした事情もあってか、韓国では日本の“パクリ文化”が横行していたようだが、若者たちの間ではモラルを尊重する動きも見られている。
「今年の4月に韓国のゲーム会社が『鬼殺の剣』という、もはやパクリの域を超えた模倣作のゲームをリリースしましたが、これにいち早く反発の声をあげたのが韓国の若者たちでした。結果的にゲームはわずか数日で配信停止に追い込まれ、日本の『鬼滅』ファンも喝采したといいますからね。政治の世界はともかく、きちんとした国際感覚を備えた若者が増えているのも事実です」(前出・ライター)
いずれにせよ、「鬼滅の刃」などのアニメ作品が、“マウント論争”に発展することなく、日韓友好の一助となることを願うばかりだ。
(道明寺さとし)