菅政権の看板政策「デジタル庁」創設に向けて大きな注目が集まっている。行政のデジタル化やオンラインによる診療・教育を強力に推進するのが主な目的だ。これにより、人工知能(AI)やビッグデータを活用した、デジタル社会への動きが一気に加速しそうだ。
しかし、AIの進化は社会全体の利便性を高める一方で、人間の職が奪われるという一面もある。2013年に、AIなどの研究を行う英・オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は論文「雇用の未来」を発表。その中に掲載されている今後10〜20年で「なくなる職業」では、銀行の融資係、保険契約の審査員などが挙げられている。これまではキャリアが必要と言われた職種までAIにとって代わられるというのだ。
すでに銀行では、融資先でのこれまでの経営実績をAIが分析すれば即座に判断できるので、融資担当行員は減らされている。事務職や単純労働といった仕事だけではない。人気職業のアナウンサーもAIに取って変わられる危険があるのだ。
すでにラジオではAIアナウンサーが登場している。「かわさきFM」では今年の4月からAIアナウンサーが天気予報を担当し、FM和歌山ではAIアナウンサー「ナナコ」を導入して話題を呼んでいる。
人間とAIアナウンサーとの大きな違いは、アナウンスの正確性にある。決して噛んだりしないのだ。人間であれば読み間違えをしてしまうこともあるが、AIアナウンサーなら、絶対に読み間違えることはない。
中国のテレビでは、AIの男性キャスターがニュースを読む、ということを実験的に行っている。顔は無表情でロボットのようなヴィジュアルをイメージしがちだが、“イケメン”のAI男性アナウンサーは、CGとは思えないクオリティだ。時にはにかんだり、瞬きをしたりと、なんとなく人間的な仕草をしながら、ニュースを正確に読むのだ。
こうなってくると、日本のテレビでもニュースを読むだけだったら、AIアナウンサーで全部置き換えることができるので、ニュースを読むアナウンサーはいらなくなるのでは、ということになってくる。
AIの進化で私たちの仕事はどうなるのか。今から準備しておく必要がある。10月31日に発売される池上彰氏の新著「私たちはどう働くべきか」(徳間書店)では、AIとの共存、ウィズコロナ時代にふさわしい働き方や転職、副業等々まで、じっくりと解説。さらには池上彰氏自身の仕事術も初公開している。
コロナ禍での新しい働き方に戸惑う人たちにとって道標となる1冊になりそうだ。