プノンペンから緊急帰国した40代“外こもり”の現在地「非正規雇用に不安も」

 駐在員や現地採用者のように仕事をするわけでなく海外のゲストハウスや安アパートでダラダラと長期滞在を続ける「外こもり」と呼ばれる日本人たち。帰国中は半年〜数年単位で非正規雇用として働き、貯めたお金で海外に行くという生活を繰り返すライフスタイルだ。

 90年代半ばから東南アジアでこうした若者たちが増え、長らくタイが彼らの聖地となっていたが、近年は制度改革の影響など長期滞在が困難に。代わって外こもりが増えていたのは隣国カンボジアだったが、「コロナの影響で帰国したのか、最近は前ほど日本人を見かけない」とは、首都プノンペン在住の30代の駐在員。

「春先までは明らかに駐在員ではなさそうな日本人が市内の日本食レストランやショッピングモールに結構いたんですけどね。カンボジアはビザ制度が緩く、コロナ前まではパスポートの有効期限内であればビザの更新が何度でも可能でしたから。今は外国人の入国制限がずっと続いていて、駐在員ではない日本人の入国は難しいんです。だから、彼らがこっちに来られるのは当分先のことだと思いますよ」

 実際、今年の春までプノンペンに滞在していた40代の外こもり男性にも話を聞いたが、「本当は半年ほど滞在する予定だったけど、1か月半ほどで帰国するハメになった」と話す。

「今は来年3月までの契約で社員寮完備の工場に勤めています。それまでに渡航可能になればいいのですが、怖いのはこれを機にビザ申請が厳格化すること。タイのように長期滞在が難しくなったらどうしようかなって。カンボジアは物価も安いし、食事や買い物、住む場所にも困りません。代わりの場所が見つかればいいですが……」

 外こもりをやめて、普通に働く気は今のところないとか。

「そもそも年齢的に正社員は無理ですから。身体が元気で渡航費用が稼げるうちはこの生活は続けたいですね。今はコロナで無理ですが、外こもりの資金がいつもより多く貯められると思って前向きに捉えるようにしています。ただ、製造業もコロナによる景気悪化で自分のような非正規雇用の人間がどんどん切られているので、そこは少し不安ですけどね」

 多少の危機意識は持ちつつもどこか楽観的。将来、路頭に迷うことにならなければいいが。

(高島昌俊)

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