プロ野球・ペナントレースがようやくスタートする。練習試合を終え、各チームとも最終調整に入ったが、「本当に大丈夫なのか?」と関係者が“ある光景”に不安を抱いていた。その光景とは、投手陣の練習メニューだ。どの球団もそうだが、主力投手のブルペンでの投球数が少ないのだ。
「ひと昔前は春季キャンプで、1回のブルペン入りで100球以上を投げた、あるいは、キャンプのトータルで千単位の投球数が当たり前でした。どの投手も今は意識してブルペンでの投げ込み量を減らしているようですね」(ベテラン記者)
たとえば、巨人・菅野智之は本来の開幕日の直前だった3月19日、東京ドームのブルペンで「約80球を投げた」と伝えられたが、それ以降は40球程度である。
他投手も同様だ。100球以上を投げるときもあったが、ブルペン入りというと、50球以下がほとんどだ。かといって、練習量そのものが減っているというわけではない。投打ともに近年のプロ野球選手はオフも海外のスポーツ施設に行き、トレーナーと個別契約して自主練習に励むなどしており、1年を通して身体を動かしている。ブルペン投球ではなく、遠投やキャッチボールで“肩周辺の筋肉”を鍛え、スタミナを養うというスタイルに変わりつつあるようだ。
それに対し、年長のプロ野球解説者は「ブルペン投球でしか養えない筋力、スタミナがある」と懸念する。しかし、メジャーリーグのスカウトたちは、それでも、「日本のピッチャーは投げすぎ」と口をそろえる。
「ブルペンの傾斜を使って投げ込みをすると、肩を痛くするというのが米球界側の解釈で、ひと昔前の日本のピッチャーたちは傾斜を使って投げ込み、肩周辺の筋肉を強くしていると思っていました」(プロ野球解説者)
今季から、各球団の主力投手たちの投げ込み量が激減したわけではない。なのに、各球団の首脳陣が一抹の不安を抱くようになった理由だが、それは、約3カ月遅れで始まるペナントレースが過密日程になっているからだ。調整が不自由分であれば故障につながる。主力投手の戦線離脱は致命傷にもなりかねない。
「今季注目の高卒ルーキーの佐々木朗希投手は、体力不足が指摘されています。東京ヤクルトの奥川恭伸もキャンプ前に肘の違和感を訴えており、巨人のドラフト1位・堀田賢慎は早々にメスを入れることになりました」(前出・ベテラン記者)
新型コロナウイルス禍で球界はいまだ“平常運転”とは言えない状況が続いている。そのなかで、菅野を始めとする各球団の主力投手たちは“自分流”を貫く強さがあったともいえるが、ブルペン練習の在り方や怪我防止策について検証すべき時期にきたようだ。
(スポーツライター・飯山満)