「東京アラートが発動されて、予告通り、東京都庁が真っ赤にライトアップされましたが、間近で見るとおどろおどろしくてかなり気味が悪いですね。知人は『悪魔城みたいだ』とこぼしていましたが、見ていて気持ちのいいものではありません。わざわざ東京アラートなんてかっこつけずに、町内放送か何かでアナウンスすればいいだけの気がします」
写真を提供してくれた東京都庁付近に住む男性はこうこぼした。今回の東京アラートについて、やはり小池百合子東京都知事の“パフォーマンス”と受け取る声は多いようだ。6月3日放送の「バイキング」(フジテレビ系)では、タレントの松尾貴史が「日本語で言って欲しいですね。東京アラートって何かショッピングセンターのネーミングみたいなね」と揶揄する一幕もあった。
その一方で、小池都知事の“物言い”に注文をつける声が増えているという。これまで小池都知事は会見の中で「接客を伴う飲食店」という表現をよく用いていた。会見の主旨と、「繁華街の」「夜の街の」という枕がつけられることから、ホステスのいるクラブ、艶系クラブ、ホストクラブなどを指しているのであろう。だが、この「接客を伴う飲食店」という表現が思わぬ風評被害をもたらしているという。
「ここで問題となるのが『接待』と『接客』の違いです。ナイトクラブを指したいのであれば風営法の第1号営業の区分を示す『接待を伴う飲食店』が正しいはずです。逆に小池都知事のように『接客』となるとそれは一般用語であり、ファミレス、そば屋、ラーメン屋、居酒屋と、ほとんどの飲食店が『接客を伴う飲食店』ということになってしまいます。小池都知事は『接客を伴います飲食業の場で感染した』と会見で報告したことがありましたが、これでは、まるで繁華街にある飲食店すべてに感染リスクがあるかのように誤解を招きかねません」(社会部記者)
これは小池都知事に限ったことではない。政府や自治体のガイドラインでは基本的には「接待を伴う飲食店」となっているのに、いざ会見となると「いわゆる接客を伴う飲食店」などと口にする知事は少なくなかった。「そこの切り分けは明確にしておいてほしい」と感じた一般飲食店のスタッフは多いのではないだろうか。この疑問について、夜の飲食業界に詳しい関係者に話を聞いた。
「確かに一般飲食店の方の中には、接待と接客という言葉を曖昧に使われるのを嫌がる声はあります。特にクラスター発生のニュース絡みでは神経質になっていました。居酒屋などは『繁華街の接客を伴う飲食店』の印象そのままですからね。政府関係者が『接客』という表現を使いがちだったのは、ガールズバーを代表格とする風営法のグレーゾーンを含めて、注意を喚起しようという意識が強かったためだと思います。うちの店は風営法で指定されているところの『接待』ではない、と言われてしまうとそれまれですから」
なるほど、とかくグレーゾーンの多い日本だが、今回のコロナ禍のような緊急時には、物の言い方ひとつで思わぬ風評被害をもたらすのも事実のようだ。接待業も接客業もともに復活を目指して頑張ろうと一歩を踏み出した矢先に発動された今回の東京アラート。東京都庁やレインボーブリッジをライトアップする前に、小池都知事には修正すべきことがあったのではないのだろうか。
(オフィスキング)