中日の正捕手争いが激化している。3月12日、ナゴヤドームで行われた全体練習に加藤匠馬が合流。練習ではかなり声を出していたが、グラウンドに入ってきた直後は神妙な表情で、その緊張感は取材陣にも伝わってきたという。
「加藤は2月22日のオープン戦でマスクをかぶりましたが、『攻守ともに覇気がない!』と伊東勤ヘッドコーチに一喝され、翌日から二軍降格となっていたんです」(スポーツ紙記者)
与田剛監督は「いま二軍にいる選手にもチャンスがあるから」と、加藤に再度チャンスを与えた理由を説明していたが、これには新型コロナウイルスによる開幕延期が微妙に影響しているという。
「この時点で中日は、一軍に木下拓哉、郡司裕也、桂依央利、そして加藤の4捕手が揃い、二軍にはベテランの大野奨太もいる。昨季、正捕手を決めきれなかった中日にとって、捕手の強化は最優先課題で、加藤の再合流をチームの起爆剤にというのが、与田監督の一つの狙いでしょう。ただし一方で、野手では2年目となる根尾が打撃面がイマイチの上に守備でも精細さを欠くなど、覇気が感じられない。与田監督も『いま一軍にいるからって安心感は絶対持たないように。我々もしっかり環境作りをして』と話しているように、チームの士気が上がってこないことは首脳陣も感じ取っているようです」(前出・スポーツ紙記者)
つまり、加藤の一軍昇格にはチーム内のモチベーション維持の意味もあるということだ。開幕戦の延期決定で、チーム内のある程度の緊張感を保つのに苦労しているのは、中日に限った話ではない。こうした非常時こそ、指揮官の力量が試されるとも言えるだろう。
(スポーツライター・飯山満)