日本での輝かしい実績をひっさげてメジャー契約を勝ち取った3人の侍たちが、ベースボール発祥の地に乗り込む。しかし、そこでは日本の当たり前が通用しない。メジャー挑戦3人衆には落とし穴も待ち受けているようだ。
日本人メジャーリーガー未開の地であるシンシナティ・レッズに入団するのは秋山翔吾(31)だ。ところが、野球を差し置いて頭を抱える心配事があるという。メジャー担当記者が話す。
「シンシナティに夫人とまだ幼い子供2人を連れていくか悩んでいるようです。街全体の治安があまりよくなく、頼みの綱である日本人コミュニティーも大都市圏に比べると極端に少ない。日本の物も入手しづらく、車移動が原則ですからね」
家族が現地の環境にアジャストできるかどうかに気を取られては、日本球界で年間216本という最多安打記録を誇る秋山といえど、野球どころではないだろう。
秋山といえば、真面目で練習熱心でも有名だ。打てなければ試合後、室内練習場にこもってひたすら打ち込むことで調子を整えてきた。ところがアメリカでは、それが許されない。
「セキュリティーの関係で試合終了後2時間以内に球場から出なければいけません。移動日のゲームやナイター明けのデーゲームなどでは練習なしで試合に入る。できないことが重なれば感覚を狂わされかねませんね」(メジャー担当記者)
とにかく、秋山は家族総出で新天地の環境に慣れる必要がありそうだ。
そんな秋山同様に、カナダのトロント・ブルージェイズに移籍した山口俊(32)にも苦戦を強いられる懸念がある。同期入団で破格の契約を結んでいる韓国人投手・柳賢振(32)らとの先発ローテ争いは厳しくなるが、最悪でも中継ぎのポジションは回ってくるだろう。一方、野球以上に不安視されているのが、アルコールとのつきあい方だ。
「北米は、アルコール依存症に対して厳しい目を向ける環境です。山口の場合は、3年前に起こした泥酔暴行トラブルがネックで獲得を見送った球団もあるくらい。リカーショップで酒を購入する際には茶色い紙袋で中身が見えないように渡されます。泥酔騒ぎになれば、最悪日本に強制送還されてしまうでしょう。現地記者は日本人記者からそうしたネタを仕入れ、来るべき時を待ち構えてますよ」(メジャー担当記者)
公私ともに苦戦が予想される2人に反して、タンパベイ・レイズにポスティング移籍した筒香嘉智(28)には、日本以上の活躍が期待できると、スポーツ紙デスクが熱弁を振るう。
「松井秀喜以来の日本人スラッガーですよ。三振の多さをネックに挙げる意見はありますが、それを補わんとするばかりに四球を選べる。出塁率を重視するレイズでは重宝されますよ」
加えて、本拠地であるトロピカーナ・フィールドも筒香に力を貸す。
「メジャーで唯一の密閉式ドーム型スタジアム。メジャーの主流は天然芝ですが、ここは人工芝なんです。さらに、ア・リーグ東地区は、5球団中2球団が人工芝を本拠地に構えるので、日本と同じ感覚でプレーする機会に恵まれています」(スポーツ紙デスク)
とはいえ、筒香にも弱点はあるようで、
「常時150キロ超のストレートを投げるメジャーのスピードに対応できるかどうか。平均140キロ前半の日本でも、ストレートに対する打率は低い。苦手球ばかりで攻められたら打率は2割を切ることも予想されます」(メジャー担当記者)
前途多難な侍3人衆だが、いち早くアメリカンドリームをつかむのは誰か。