筒香嘉智外野手がタンパベイ・レイズとの契約で合意に達した。細かな条件はこれからだが(12月15日時点)2年契約で総額1200万ドル(約13億2000万円)前後となる見込み。レイズは「2番レフト」で出場していたトミー・ファムをトレードに出しており、筒香はレギュラーを確約されたと見ていいだろう。
しかし、今回のレイズとの契約で球界のウラ事情も見えてきた。
「ファムは17年に23本塁打25盗塁をマークしており、『30‐30』が期待されていました。俊足で守備範囲も広く、選球眼も良いので出塁率の高い右バッターです」(在米ライター)
走攻守3拍子揃った好スラッガーだが、放出に踏み切った背景にはレイズが所属するアメリカンリーグの戦況も絡んでいた。
「ア・リーグは2011年以降、MVPに左バッターが選ばれていません。リーグ全体を見渡しても、左バッターが活躍していないので、今オフの米FA市場において、筒香が魅力的に見えたようです」(同前)
たしかに、筒香に興味を示していたとされる他の米球団はブルージェイズ、レンジャーズ。両球団ともア・リーグだ。ナショナルリーグのドジャースが早々に交渉の席を離れたところからも、ア・リーグが左打ちの大砲タイプを欲していたかが分かる。
「筒香の代理人が『ワッサーマン・メディア・グループ』のジョエル・ウルフ氏というのも興味深いですね」
というのは、NPB関係者だ。同事務所とウルフ氏はダルビッシュ有の代理人としても知られている。
筒香がまだ二軍で悶々としていた頃のことだ。筒香は村田修一(現巨人コーチ)にかわいがられ、オフシーズンも同じトレーニングジムで練習をしていた。そこで、偶然で会ったのがダルビッシュだったという。
「村田がダルビッシュを見つけ、筒香を紹介したんです。『将来は絶対にメジャーに行くヤツだからよろしく』と、プッシュしていました」(NPB関係者)
ダルビッシュは筒香に強い印象は持たなかったそうだが、3人で話しているうちに、筒香と“共通の知人”がいることも分かった。それが「ワッサーマン・メディア・グループ」のスタッフで、ダルビッシュが「中学のときから家族ぐるみで」と言えば、筒香も「高校のときに声を掛けてもらった」と返したそうだ。以後、ダルビッシュも筒香のことを気に掛けていたという。
ア・リーグで“左の大砲”の需要が高いことは筒香も把握していた。もう少し粘れば、レイズ以上の条件を出すア・リーグ球団が現れたかもしれないが、近年の米FA市場の交渉・契約は遅延傾向にある。高額年俸を得ても、キャンプ、オープン戦での調整期間が短くなり、結局は自分のクビを絞めることになるのだ。
筒香が短期決着を狙ったのは、ダルビッシュの助言によるものかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)