来年春に行われる第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の大会出場国が16カ国から20カ国に拡大される。大会主催者でもあるMLB機構からの通告だったようだ。NPBの関係者からも、「まあ、前回大会が終わったころから、そうなるみたいな話は聞いていましたけどね」と、ちょっと不満顔。しかし、東京五輪の次のフランス・パリ五輪大会で再び野球競技が消滅することは“決定”であり、参加国の拡大で競技者人口を増やしたいとする目的に反対する声は、どの参加国からも出ていない。
「今年3月、ブラジル、フランス、ドイツ、チェコ共和国、フィリピン、スペインなど12カ国が2組に分かれて予選を行い、それぞれ上位2カ国が出場します。野球よりもサッカー人口の多い国も目立つので、出場国の増加が大会のレベルアップにはつながりませんが」(球界関係者)
WBCは選手の参加規定がさほど厳しくない。選手自身が出場国の出身でなくても、「両親のどちらかの出生地が当該国」などの条件が合えば出場が認められてきた。
また今回の出場国拡大と同時に、こんな情報も飛び込んできた。大会レベルの向上、また野球競技への興味を引くために「2カ国目の出場もあり得る」と言うのだ。どういう意味かというと、
「第2回大会で『ひょっとしたら?』というのがあったんですよ。第1回大会でアメリカ代表として出場したアレックス・ロドリケス(当時ヤンキース)がドミニカ共和国の代表練習に参加していました。彼の出場辞退で実現しませんでしたが、ロドリゲスのように1度、アメリカ代表として大会に出ても、次大会から違う国の代表選手になれるというのです」(特派記者)
アメリカ代表から、野球新興国に転じる選手が出てくるかもしれない。そうなれば、出場国増によるレベルの低下も防げるだろう。
「09年キューバ代表だったアロルディス・チャップマン(ヤンキース)が、16年にアメリカ市民権を取得しました。彼は『アメリカ代表になりたい』とコメントし、関係者をビックリさせました」(同前)
チャップマンは09年の第2回大会にキューバ代表として出場し、世界を驚かせた剛速球左腕だ。キューバから亡命し、現在もヤンキースのクローザーとして活躍しているが、大会主催者でもあるMLB機構が選手の代表分散策を進めるのであれば、その先例として、チャップマンのアメリカ代表を認めるかもしれない。
「MLB機構は野球の頂点を決める大会は、プレミア12でもなければ、五輪でもなく、WBCというスタンスです。前回大会ではメジャーリーガーを出場させましたが、『連投NG、肩を作ったらすぐに登板させろ』など契約がいっぱいで、米代表監督は気苦労が絶えませんでした」(同前)
侍ジャパン対チャップマンが再現すれば、日本の野球ファンもワクワクするだろう。しかし、本当に野球競技者の人口拡大を目指すのなら、東京五輪の野球競技にも協力してほしいものだが…。
(スポーツライター・飯山満)