台湾で行われているウインターリーグは、若手の登竜門とも位置づけられている。16年の同リーグで打率5割3分6厘強と大爆発したのが、オリックスの吉田正尚。阪神・岩貞、ヤクルト・村上らも台湾で活躍し、次シーズンにブレイクしているため、「今年は誰だ!?」と注目されていた。
「ヤクルトから久々に長くレギュラーを張れるキャッチャーが誕生しそうです。現地に派遣された二軍コーチも大プッシュ。楽天からヤクルトに移籍した嶋基宏もうかうかしていられませんよ」(特派記者)
高卒3年目の若手捕手、古賀優大(明徳義塾)のことだ。一軍出場試合数はまだ「18」だが、楽天、日本ハムなどヤクルトと同じイースタンリーグの首脳陣からは一目置かれていた。打撃はフツー、盗塁阻止率もバツグンに高いわけではない。しかし、そつなくこなすタイプで、ウインターリーグでもバッテリーを組む他球団の投手に対して、ウイニングショットを引き立てようとする”健気なキャッチング”で評価を高めている。
「二軍監督だった高津臣吾新監督も、古賀を評価していたはず。嶋を獲得しましたが、二軍戦で80試合も起用したのは高津監督。ひょっとしたら、『開幕スタメン古賀』なんてこともあるかもしれません」(球界関係者)
そもそも、嶋の獲得を決めた背景には、ドラフト1位・奥川恭伸を育ててほしいという狙いもあった。かつて、嶋が田中将大投手をリードしてきたからだ。
「奥川を始め一軍経験の浅い投手が投げるときは嶋、ベテランが投げるときは勉強を兼ねて古賀なんて併用も考えられます」(同前)
嶋はヤクルトへの入団会見で「本気でレギュラーをつかみにいく」と語ったが、古巣退団を決めた時には「フラットな目で勝負させてくれるところに」とも語っていた。
ヤクルトには契約更改で「打倒・嶋」を口にした中村、松本ら有望捕手もいる。
高いレベルで正捕手争いするのはファンにとって歓迎すべきことだが、二軍で1人の捕手に80試合もチャンスを与えるのは、例外中の例外。高津監督が嶋の獲得を決めたのは奥川の育成ではなく、古賀や中堅捕手たちに“活”を入れるためだったとも思えてくる。
嶋は新天地でも”フラットな目“で見てもらえないかもしれない?
(スポーツライター・飯山満)