安倍VS菅「桜スキャンダル」暗闘の舞台裏(2)“菅枠”の閣僚が相次いで辞任の裏

 官邸関係者が続ける。

「その際、官房長官はどこまで追及されていいかを考え、内閣府に指図できる。『この書類はシュレッダーにかけたことにする』というふうに。今回のスキャンダルでは、安倍総理が窮地に陥ることを予測しつつ、野党の追及をある程度、放置している。攻撃を妨害せず、あえて見て見ぬフリ。つまりは菅官房長官による『安倍潰し』という謀略の一面も持っている」

 安倍総理の自民党総裁任期は再来年の9月まで。異例の「総裁4選」の声も聞こえてくる中、事実上の派閥にあたる菅グループを着々と作り上げ、ポスト安倍への野心をひそかに燃やしているとされるのが菅官房長官なのだ。

 ここでそもそもの「発端」に触れるべく、今年夏の参院選に時間を戻そう。

 広島選挙区(改選定数2)は岸田文雄政調会長(62)率いる岸田派の重鎮・溝手顕正氏(77)の金城湯池とされてきたが、そこに菅官房長官にきわめて近い河井案里氏(46)が突如として参戦、自民党は分裂選挙戦となった。岸田派幹部が振り返る。

「ポスト安倍をニラむ『岸田vs菅』の広島代理戦争とも言われた仁義なき分裂選挙は、菅さんのほか安倍総理も応援に駆けつけたこともあり、河井さんがまさかの勝利。93年以降、5回の連続当選を重ねてきた溝手さんは、野党候補にも負けて議席を失った。しかも広島は岸田派が衆参で6議席を押さえていた旧宏池会王国。岸田さんの面目は丸潰れだよ」

 その後、「運動員(ウグイス嬢)に公職選挙法で定める限度額の2倍の報酬を支払っていた」との疑惑が河井氏に浮上。9月の内閣改造で法相に抜擢された夫の河井克行氏(56)は就任から2カ月足らずで、妻の疑惑の責任を取る形で辞任に追い込まれたのだ。

 自民党大物議員は、抗争劇の芽となった疑心暗鬼の渦について、こう明かす。

「克行氏は菅さんの推薦、いわゆる菅枠で入閣を果たした菅グループの一員。党内でも官邸内でも当初、法相辞任につながった案里氏の疑惑発覚は岸田派による意趣返し、との見方が広がっていた。しかし裏の裏もあれば、そのまた裏もあるのが政界。岸田さんも案里氏の応援演説に駆けつけていたし、そもそも岸田さんはこの手の権謀術数にたけたタイプではない。そこで菅さんは『ひょっとして裏で糸を引いているのは安倍総理なのではないか』と怪しんだと、菅さん周辺は言うんだけどね」

「4選まんざらでもなし」の安倍総理にとって、菅官房長官の勢力拡大はひとつの脅威となるが、

「ここらで1本、菅さんにクギを刺しておこうと考えるのは、むしろ当然」(大物議員)

 事実、克行氏が法相を辞任する6日前の10月25日にも、同じく菅枠で入閣を果たしたとされる側近の菅原一秀氏(57)が選挙区の有権者に香典、メロン、カニなどを贈っていた疑惑によって、経産相辞任に追い込まれている。

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