ロシアによるウクライナへの軍事侵攻からもうすぐ3年半。前線では今もなお激しい戦いが続いているが、西側からの経済制裁を受けながらも戦争で軍需関連生産が活発化しているロシア。所得が記録的に伸びをみせ、賃金がインフレを上回るペースで上昇。さらに日常生活に変化がなかったことで消費者のマインドも低下することなく、可処分所得も増加し、戦前を上回る水準にまで回復していると伝えられている。外報部記者が語る。
「ウクライナ戦争開始後、ロシア国内で事業を展開していた1000社以上の外国企業が営業停止ないし撤退を決定しましたが、実はこの時、プーチン大統領がこれらの外国企業を安値でロシア側に売却するよう圧力をかけたんです。結果、ロシア国内の企業は、欧米ブランドを二束三文の安値で購入。しかもロシア政府は、著作権保護など規制を大幅に緩和し、非友好国家の特許盗用を事実上合法化した。これにより、ロシア企業が海外ブランドの特許を許可なしで使っても損害賠償訴訟ができなくなり、結果、偽マクドナルドの『フクースナ・イ・トーチカ』をはじめ、スターバックスもどきの『スターズコーヒー』ほか、日本ブランドのユニクロをほぼ丸パクリした『ジャスト・クローズ』らが、大手を振って店舗を展開するようになったというわけです」
ほかにも、丸パクリされた西側企業は米国の「KFCチキン」、スペイン衣類ブランド「ザラ」、デンマークの玩具メーカー「レゴ」等々、枚挙にいとまがない。ただ、非友好国家の特許盗用が事実上合法化させているため、仮に戦争が終結しても、欧企業の知識財産権をロシアが無断使用できる以上、西欧企業によるロシアでの事業再開は相当ハードルが高いと言わざるを得ない。
「おいしい。ただそれだけ」を意味するフクースナ・イ・トーチカでは、「ビッグマック」もどきを「ビッグヒット」、「クォーターパウンダー」を「ビッグスペシャル」などといった名前で販売。ほかにも、ソ連時代によく家庭で作られていた菓子をアレンジした独自メニューも販売している。
「これは、戦争終結後に“西側本家”がロシアに戻ってきても顧客を奪われない対策だとみられますが、戦争の終わりが見えない中、競合する相手がいないロシア国内企業は、まさに今が稼ぎ時。2022年6月に安価でマクドナルドを買収したフクースナは1年で50以上の新店舗を開店。いまでは、1日の来客数が200万人を超え、利益は8倍に跳ね上がったと伝えられていますからね。CEOは笑いが止まらないでしょう」(同)
戦場では多くの血が流れている最中、何とも不条理な話である。
(灯倫太郎)