イスラエルが自国を核攻撃から守るためにイランを突然攻撃してから10日が経過した。
今や世界の関心は、トランプ米大統領が同盟国イスラエルを支援するため、本当にイランへの軍事攻撃に踏み切るのかという点に集まっている。軍事ジャーナリストが指摘する。
「米原子力空母ニミッツは、6月末に中東地域に派遣される予定です。アラビア海にはすでに米原子力空母カール・ビンソンが展開しており、最新鋭空母ジェラルド・フォードも欧州海域に向かっている。トランプ政権は万が一のイラン戦争に備え、急ピッチで準備を進めている。その一方で、対決姿勢をチラつかせながらも、イランが核爆弾に必要なウラン濃縮をやめれば対話による解決も持ち掛けるという二面作戦だ」
さらに、こう続ける。
「イランもここにきて話し合いに応じる姿勢は見せている。しかしトランプ氏は、イランが完全降伏し、完全に核放棄するなら攻撃はしない、という強気の姿勢。これに対しイランは、イスラエルやアメリカに都合のよい一方的な停戦や屈服には断固として応じない構え。そのため、仮に話し合いが行われても決裂する可能性が高く、アメリカがイスラエルとともにイラン攻撃に踏み切る可能性は極めて高い。7対3で、戦争突入のほうが7だ」
では、アメリカが攻撃に踏み切った場合、どんな作戦に出るのか。
「イランの核施設の中核は山岳地帯の地下80メートルにあり、通常の空爆では届かない。それを破壊できるのは世界で唯一アメリカが保有する『GBU-57』、いわゆる“バンカーバスター弾”だけ。イスラエルは単独でも地下核施設を無力化できるとしているが、これは疑わしい。いずれにせよアメリカは、このバンカー弾を投下し、世界最強の軍事力で1カ月程度でイランの最高指導者ハメネイ体制を転覆させるという肚だ」(前出・ジャーナリスト)
だが、イギリスの軍事アナリストはこう警鐘を鳴らすのだ。
「アメリカの軍事力をもってしても、イランを圧倒できるとは限らない。なぜならイランは、バンカーバスターによる攻撃すらも想定し、以前から防御態勢をととのえていたという見方もある。つまりバンカー弾にも耐えられる高強度のコンクリート技術で核関連施設やミサイル格納庫を建設し、そこに大量のミサイルを保持している可能性もある」
仮に、アメリカとイスラエルがイランと全面衝突すれば、イラクやイエメンなどの親イラン武装組織が参戦する可能性も高いという。
それだけではない。今回のイスラエルのイラン攻撃を激しく非難しているのが北朝鮮である。イランと北朝鮮は核開発で過去に緊密な関係を築いていたと見られており、仮に北朝鮮が核弾頭を持っているとすれば、その技術の多くはイランから提供されているとの指摘もある。そのため、イランが窮地に陥れば、北朝鮮が軍事的支援に乗り出す可能性もある。北朝鮮から大量の武器、ミサイルが移動するシナリオも排除できないというのだ。
「つまりアメリカは1カ月でイラン問題を終わらせられると高をくくっているが、そうはいかない。アフガン、ベトナムでアメリカが苦戦したように、イランとの戦争は無間地獄、泥沼戦争の始まりになる」(同)
米有力紙ワシントン・ポストが6月18日に実施した世論調査では、アメリカ国民の45%がイラン攻撃に「反対」の意思を示したという。戦争反対論は共和党内にもジワジワと拡大しつつある。
(田村建光)