石破茂首相が当選1回の衆院議員に1人10万円相当の商品券を配っていた問題で、政権内部が大揺れに揺れている。
3月3日、石破氏は総理公邸で会合を開いた際、新人議員15人に対し商品券を配布していたのだが、政治資金規正法第21条の2では「何人も、公職の候補者の政治活動に関して寄付をしてはならない」と規定。「寄付」には金銭だけでなく株券や小切手、商品券も含まれており、違反した場合、1年以下の禁錮または50万円以下の罰金が課せられる。石破氏は商品券は「お土産代わり、本人・家族へのねぎらい」が目的で、会合も政治活動には当たらないと主張しているものの、このご時世にいくら何でも一人当たり10万円渡すなど、庶民感覚のズレも甚だしく、今後この行為が「政治活動に関する寄付」に該当するかどうかが争点になるだろう。
今回の商品券問題を受け、自民党内からは「唯一のウリだった『クリーン』イメージが根底から揺らいだ。これで支持率低下は免れられない。もう石破では戦えない」との首相退陣論が公然と出始めており、野党各党とも石破氏の責任を厳しく問う構えだ。
ただ、野党としては石破氏にそのまま続投させ、弱体化した石破政権のまま参院選に臨みたいとの思惑もある、というのが全国紙政治部記者だ。
「石破氏が『政治の師』と慕っていた田中角栄元首相の代名詞が、『金権政治』。一議員時代はたしかにケチで人付き合いが悪かった石破氏も、首相になったことで、つい角栄政治時代の幻影が蘇ったのかもしれませんね。ただ、いかんせん、時代錯誤も甚だしかった。本来であれば即、内閣不信任決議案の提出となるわけですが、首相の進退について問われた立民の野田佳彦代表は『まだそこまでの話ではない』としており、維新の前原誠司共同代表も『もらった方が買収されたと思っても仕方ない』と断じているものの、今後の対応を再検討する考えを示しています。つまり、野党側も国民の手前、石破氏を追及することになるでしょうが、現状は様子見したいという本音が見え隠れしているというわけです」
その理由の一つには、石破政権が少数与党だからこそ、野党が個別の要求を飲ませることが出来た、という背景があることは言うまでもない。
「石破氏は自民党内に基盤もなく、リーダーシップが欠けている一方、現状、自民党内には『ポスト石破』なる存在がいません。したがって野党としては行いたい政策を石破氏に飲ませ、その成果を踏まえ都議選や参院選での躍進を図りたい。つまり、そう考えた場合、弱い首相のほうが都合がいいんです。そのため、おそらくは『生かさず殺さず』のまま、この問題を契機に参院選まで石破批判を引っ張っていくことになると考えられます」(同)
ただ、そうはいっても先に触れたように参院選を控え、自民党内の会合では「参院選は石破氏では無理」との声が旧派閥議員や首相経験者らから出ていると言われ、今後、世論の推移次第では退陣論が一気に加速する可能性も否定できない。
商品券配布が法に抵触する、しないは今後の問題として、衆議院の政治改革特別委員会で企業団体献金についての議論が行われる中、少なからずの影響を与えることは必至。
はたして「石破おろし」は加速するのか。そして、今後の「政局」に与える影響とは…。
(灯倫太郎)