本田真凜が打ち克った「交通事故」と「気の毒な練習環境」

 フィギュアスケート女子のGPシリーズ・カナダ大会で、6位に入った本田真凜。大会3日前、タクシー乗車中に交通事故に見舞われ、SP(ショートプログラム)は10位と出遅れたが、フリーではすべてのジャンプをノーミスで決めてみせた。
 
「SPでは、事故で痛めた右足のすねをテーピングをグルグル巻きにし、思うようなジャンプもできなかった。見るからに痛々しい雰囲気でした」(特派記者)

 2016年には世界ジュニア選手権の女王にも輝いた。18年平昌冬季五輪のメダル候補と位置づけられ、「ポスト浅田真央」とも称されたが、その後は長いスランプに苦しんでいる。

「本田はアメリカに拠点を移し、アルトゥニアンコーチのもと、スケート漬けの毎日を送っていると伝えられましたが、実際は行ったり来たり。国内で1人で練習する日もありました。その後、本田武史コーチと契約し、国内で練習・調整を続けていました」(体育協会詰め記者)

 今年の春には、本田が兵庫県西宮市内のスケート場に通う姿も目撃されている。トップ選手のようにリンクを借り切っての練習ではなく、一般スケーターに交じって合間を見てジャンプの練習をしていた。その姿に利用者は「世界の本田」と気付かなかったそうだ。

 紀平、坂本花織らの後輩たちとの距離は縮まっていない。しかし、こんな指摘も聞かれた。

「今までの本田なら、事故を理由に欠場していたかもしれません。実際、フリーに出かける30分前まで出場するかどうか悩んだと言います。SPの演技後にケガの状況を訊かれたときは、元気なく淡々と答えていましたからね」(同前)

 一部メディアによれば、事故後「ちょっとした音でも、不安に感じる」と話していた。だが本田は、SP演技のミスについては「ケガのせいではない」と、強い口調で否定していた。

 試合後は「心から出てよかったと思います」と語った本田真凛。一人練習のつらい日々が、精神的な成長にもつながっているのだろう。不遇の怪我を乗り越えたら、真の復活となりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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