10月23日、米グーグルは、自社が開発する量子コンピューターが最先端のスーパーコンピューターよりも速く計算問題を解く、“量子超越性”を実証したと、英科学誌「ネイチャー」に発表した。これまで、量子コンピューターはスパコンを遥かにしのぐ性能があるとされてきたが、実証されたのは初めてのことだ。
「発表によれば、ある特定の計算問題をさせたところ、最先端のスパコンでは約1万年かかるのに対し、量子コンピューターは3分20秒で解くことができたといい、実に15億倍もの性能を持つことを証明したのです。研究グループは『ライト兄弟の有人初飛行に匹敵する意味をもつ』とし、本格的な量子コンピューターの実用化へ向けた一歩を踏み出したとしています」(サイエンスライター)
スパコンを遥かにしのぐ性能が実証されたという量子コンピューターだが、実用されることで世界はどのように変わるのだろうか。
「量子コンピューターが実用化されれば、ありとあらゆるものが高速化、最適化されるでしょう。人工知能は格段に高性能になり、車の自動運転は精度が増し交通渋滞も解消されるかもしれません。さらに、新薬の開発もスピーディーになり、あらゆる病気の治療の可能性を広げ、気候変動の解析をすることで自然災害への対応を早めることもできます」(科学雑誌記者)
ただし一方で、こんな問題も起こりかねないという。
「現在使用されている暗号技術を一発で解読できる計算能力を持つため、犯罪への悪用も不安視されています。23日に量子超越性が発表されるや、ビットコインが暴落しましたが、これは暗号資産を解読される恐れがあるとの懸念が広まったことによります」(科学誌ライター)
また、量子コンピューターには、超電導体を絶対零度に近い温度まで冷却し、量子状態を安定させてコントロールしなければならず、外部からのノイズの影響を受けやすくエラーが起こりやすいという課題もある。
グーグルは2022年までに環境問題に役立てると主張しているが実用性には懐疑的な見方も多く、すぐに我々の生活を一変させるものではないのかもしれない。
(小林洋三)