──次に撮る作品は決まっているのですか。
根岸 まだ何も決まっていません。撮るにしてもまた16年後になるんじゃないかな(笑)。
──小説とかで、撮ってみたいと思っているものがあれば教えてください。
根岸 いろいろと読んでいて目をつけている作品もありますが、それについては今の段階で言うことはできないですね。
──最近、老人を描いた映画「敵」(25年、ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ)が大きな話題になりました。高齢者が増えている今、そういう作品がこの先もっと増えていくのでは。
根岸 それは感じています。あれは大学教授をリタイアした人物の話だったけど、おもしろかったですね。自分も少し前まで長塚京三さんのように大学で教えていたので、リタイアした大学教授って、こんなふうに映画化できるんだなあ‥‥とか思いました。
──根岸監督は、今は東北芸術工科大学の理事長をされていますが、学生の中から映画の世界に入られた人もいるのでしょうか。
根岸 いますよ。優秀な監督や人材をしっかり映画界に送り出している。
──スマホが手離せないネット社会ですが、当然、恋愛モノなどは昔と違った形になりますよね。
根岸 恋愛モノに限らずネット社会ならではの作品は作られていくだろうけど、そういうものは若い人に任せたい。自分は生活のアナログ的なものにこだわっていきたいですね。
──映画を観るスタイルも変わってきていて、Netflix作品のような配信も増えていますが、そのあたりはどう思われますか。
根岸 そういう時代なんですよね。昔は観たい作品があれば、わざわざ夜中の川崎の映画館まで足を運んだこともありましたが、そんなことをする必要はなくなった。便利になったことはいいことだと思っています。
──一緒に仕事をしてみたい俳優さんがいたら教えてください。男女を問わず。
根岸 う~ん、映画の中身から考え出すので、あるストーリーの中で、この人に演じてほしいとかは思ったりしますけど。
──これから映画界を目指す人に何かアドバイスすることがありましたら。
根岸 技術も才能もあるのだから、海外の監督のように黒澤や小津、溝口をはじめとした日本の監督の作品も観て学んで、国際的に活躍する監督が増えてほしいですね。
根岸吉太郎(ねぎし・きちたろう)1950年生まれ、東京都出身。74年、早稲田大学第一文学部を卒業後、日活に助監督として入社。78年「オリオンの殺意より 情事の方程式」(日活)で監督デビュー。以降、コンスタントに作品を発表。その演出力の高さで、日本を代表する監督の1人に。代表作に「遠雷」(81年、ATG)、「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」。
(インタビュー・構成/若月祐二)
映画「ゆきてかへらぬ」(配給:キノフィルムズ)は2月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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*週刊アサヒ芸能2月27日・3月6日号掲載