石破首相と孫正義氏「急接近」の裏にあったトランプ大統領「懐柔策」と日本の「AI戦略」

 最近になって永田町で飛び交い始めた情報がある。それは、石破茂首相に対する「ソフトバンク」の孫正義会長の影響力が急激に増している、というものだ。金融系シンクタンク関係者が言う。

「石破首相は2月7日(日本時間8日)、トランプ米大統領と初の日米首脳会談を行ったが、トランプ大統領からはカナダ、メキシコ、そして中国に示したような無茶ぶりの要求を突き付けられることもなく、会談を無事に終えることができた。このスムーズな会談の背後で注目されたのが、孫会長の果たした役割なのです」

 孫氏は世界でも屈指のスピードで、二期目の就任が決まったトランプ大統領と会談した。さらに孫氏は、チャットGPTを開発した「オープンAI」のサム・アルトマンCEOや、「オラクル」のラリー・エリソン会長らとも、トランプ大統領と会談している。これらの会談の後、トランプ大統領は、孫氏らが4年間に日本円で78兆円にのぼるAIインフラ投資「スターゲート」事業を始めると発表したのだった。

 こうした孫氏の動向に注目したのが石破首相だ。首相は1月7日夜、東京・赤坂の日本料理店「赤坂浅田」に孫氏を招いた。その場には岩屋毅外相、武藤容治経済産業相らも参加し、約2時間半にわたり会合を持ったという。

「会合ではトランプ大統領の情報を孫氏から得たようだ。一方で、今のAIの世界の流れもレクチャーされた。首相は日本でも早急なAI投資の必要性を再認識したという」(官邸記者)

 自民党関係者は石破首相と孫氏の関係をこう見る。

「石破首相は孫氏にぞっこんのようだ。今、官邸には首相の側近、赤沢亮正経済再生担当相はじめ橘慶一郎官房副長官ら錚々たるメンバーがいる。だが、いずれも論者ではあるが、孫氏のようにトランプ大統領に食い込んでおらず、IT関連事業に通暁する実業家でもない。それだけに、首相の頭の中では、孫氏の提言や情報がより重みを増しているようだ」

 もっとも、孫氏との関係について、官邸関係者は石破首相にこう進言するのだ。

「石破首相へひと言警告したい。孫氏はあくまで実業家であり政治家ではない。首相が情報源の1つとして孫氏と会うことは構わない。だが、孫氏を石破内閣のラスプーチンにしてはダメだ。石破内閣が即死する可能性もある」

 2人が今後も一定の距離を置いて付き合うのか、あるいはさらに蜜月の関係となっていくのか、注視されるのである。

(田村建光)

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