米大統領就任後、初めての空爆命令となった。米軍が2月1日、トランプ大統領の命を受け、国際的な過激派組織「イスラム国」(IS)幹部らが潜伏するアフリカ東部ソマリア山間部の拠点を空爆。ヘグセス国防長官は、ソマリア政府と連携した空爆によりISメンバーら複数を殺害したとの声明を発表した。
1日朝、空爆を命じたことを明かしたトランプ氏は、自身のSNSに《洞穴に隠れていたこれらの殺人者たちはアメリカと、同盟国に脅威を与えた。攻撃は洞穴を破壊し、民間人に1人の犠牲も出さず、テロリストたちを殺害した》《ISや、米国人を攻撃しようとする他の全ての者たちへのメッセージは『必ず見つけ出し、必ず殺す!』ということだ》と過激なメッセージを投稿。続けて《バイデン(前大統領)とその取り巻きは迅速に行動しなかった。私はそうした!》と、前政権の弱腰ぶりを批判し自らの正当性を誇示した。
トランプ氏とISとの戦いは、第1次トランプ政権(2017~2021年)時代にさかのぼるが、イスラム過激派組織の打倒を優先目標に掲げていたトランプ氏は、ソマリアやニジェールでの軍事作戦に積極的に関与してきた。外信部デスクが語る。
「ISの指導者、バグダディ容疑者がイラク北部モスルで、イスラム国による『イスラム帝国》樹立を宣言したのは2014年7月のこと。以来、ISは各地でテロ行為を頻発させ、民間人に多くの被害者が出ていた。そこで米国ほか有志国が激しい空爆を実施。しかし、ISの勢力は衰えることを知らず、結果15年5月までにシリア領の過半を制圧することになったわけです」
ところが、17年10月にはシリアの反体制派シリア民主軍によって完全制圧され、その後、イラク軍の猛攻でISはイラク国内からほぼ一掃される形となった。そこでトランプ氏は翌18年12月に勝利宣言し、シリアからの撤退を表明。ところが、イラクで戦力を復活させていたISは米軍撤退後、再び支配地奪還に向け活動を活発化させることになるのだ。
「米政府は11年10月、バグダディ容疑者をテロリストとして正式認定。拘束や死亡につながる情報に1000万ドルの懸賞金をかけ、17年にはその額も2500万ドルに増額した。結果、バグダディ容疑者は19年10月にシリア北西部の逃亡先で、米軍に追い詰められ自爆チョッキを起爆させ自殺するのですが、記者会見に臨んだトランプ氏は、『軍用犬に追われたゴロツキは、死ぬ直前、すさまじい恐怖とパニックにかられ、おびえまくって、泣き叫びながら行き止まりのトンネルに駆け込んだのだ。病んだ狂った男だった。犬のように死んだ。臆病者のように死んだ』と激しい口調で述べたものです」(同)
その後、ISは2代目のアブイブラヒム・ハシミ、2代目のアブハッサン・ハシミ、4代目のアブ・フセイン・フセイニが後任最高指導者となるものの、全員殺害され、現在は残党の中から選ばれた指導者のもとで活動しているとみられている。
組織自体の規模は縮小したとはいえ、テロ行為を繰り返す国際的な過激派組織であるIS。トランプ氏は今後も、ISの壊滅を目標に計画を遂行していくと宣言しているが、空爆にせよ、地上戦にせよ、そうなれば今後、民間人に被害者が出ないとは言い切れない。むろん、同志を殺されたIS兵士たちの恨みによる報復が激化する可能性も否定できない。
強いアメリカを標榜する第2次トランプ政権発足だが、再びテロリストとの戦いがエスカレートしないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)