トランプ氏が「絶対に領有が必要」と語った「グリーンランド」の知られざる価値とは

 北アメリカ北東部にある世界最大の島・グリーンランドについて、大統領再任を目前に控えたトランプ氏が領有の意向を示し、話題となっている。トランプ氏は2019年にも同様の発言をしており、今回も「世界の国家安全保障と自由のために、アメリカにはグリーンランドの所有と管理が絶対に必要だ」と述べている。

 グリーンランドは、日本を中心に据えたメルカトル図法の地図で見た時に、右上隅にある島。デンマーク領で、島の面積は日本の約5.7倍だ。

 大半が北極圏であり、ほとんどが雪と氷で覆われている。人口はおよそ5万7000人で、その3分の1は島の南にある最大の街・ヌーク(1万9872人、24年1月時点)に住む。とはいえ、人口密度はほぼ0に等しい。雪原だらけで、緑は短い夏に南部の沿岸部に草花が少し生える程度。主な産業は漁業で、エビやニシンなどを輸出している。

 ところが、この島は石油や天然ガスをはじめ、セシウムやイットリウム、ランタンなど、数多くのレアアースが存在し、推定埋蔵量は世界最大規模の150万トンに及ぶと言われている。また、北極海を挟んでロシアの対岸にあるため、米国にとっては地政学的に大きな意味を持つ。現在、島の西北部には世界最北の米軍基地ピツフィク宇宙軍基地があるが、さらなる基地の設置など、戦略上の拠点とする狙いもあるようだ。

 ちなみに日本からグリーンランドへの直行便はない。夏場は北米からのフライトもあるが、年間を通じて運航があるのは、コペンハーゲン(デンマーク)かケプラヴィーク(アイスランド)からに限定される。日本からは最低でも2フライト以上が必要で、約36時間ほどかかる。それでも「世界一美しい」と称されるオーロラ見学をはじめ、氷床トレッキングや氷山クルーズ等、旅行愛好家からは最北の秘境として人気だ。

 観光や漁業に加えて、エネルギーや軍事など、様々な面で潜在的ポテンシャルの高いグリーンランド。トランプ氏の発言もあって、にわかに注目を集めているのである。

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