健康宅配チェックシート〈スマホ依存症〉(2)「早期認知症」の発症リスクが高まる

 スマホの使い勝手のよさが仕事や趣味の「マルチタスク」を可能にした。ただし、効率アップによる負担は脳が一挙に引き受けているようで、

「テレビを視聴しながらスマホで動画、漫画、ネットニュースを楽しむ人は少なくないと思います。効率よくコンテンツを楽しめるのも脳が高速でタスクを切り替えているからです。この〝高速スイッチング〟が脳へのダメージになります。脳に大量の情報が送られるとストレスホルモンのコチゾールが増加。脳の記憶を司る部分に負担がかかり『認知機能低下』や『注意力散漫』を招いてしまうのです」

 日常生活で怖いのは「一時的記憶喪失」に他ならないだろう。

「電車で降りる駅を乗り過ごしたり、仕事中に用事を済ませるために離席したのに肝心な用事を忘れたりした経験はないでしょうか?脳の疲労が限界を迎えると、電子機器のヒューズが飛んだように数秒間の記憶が飛んでしまいます。車の運転中にカーナビを見ながらいっぱいいっぱいになって、赤信号に気づかずに‥‥なんて最悪のケースも珍しくありません。同時に、早期認知症の発症リスクを高めてしまいます」

 いつでもどこでもインターネットで検索できる環境にも災いのタネが潜んでいる。

「何でも答えがすぐに出てくる『即答性』が忍耐力を低下させている。通販サイトの営業努力、すぐに欲しいものが自宅に届けられる時代も相まって『待つ』ことをストレスに感じる人が増えた印象です。何でもすぐに結論を求めたがる人は注意した方がいいでしょう。また、みずから何でも調べられる、前提ができあがっていることが厄介なのです。例えば、ビジネスシーンで上司や部下に些細なことを質問しようにも、聞けずに1人で抱え込んでしまうケースも少なくありません」

 結果、みずからのマインドまで凝り固まってしまうようだ。

「みずから検索したキーワードやAIが誘導する情報ばかりを目にするようになります。そのため情報が偏ってしまい、いわゆる『陰謀論』に傾倒してしまいがちです。新聞やワイドショーのように、多様な価値観に付随した情報に触れる機会が減りますからね」

 同様に「LINE」をはじめとしたメッセージアプリの普及にも功罪アリ。

「文章のやり取りにも即答性を求められるようになりました。『既読』を付ければ互いに返信しないと気まずいじゃないですか? かつては、手紙やメールで返事が来るまでのインターバルに『あの文章表現はまずかったかな?』などと葛藤していたと思います。そういう時間が減ってしまい、相手を気遣えない人が老若男女問わず、増加傾向にあります」

 人間のコミュニケーションには「間」も必要なのである。スマホとの付き合い方を一考するべきだろう。

【「スマホ依存症」チェックシート⑩】

①1日に4時間以上スマホを使用している(仕事を含めて)
②就寝前に電気を消してもスマホをチェックしてしまう
③ガラケー時代よりも使用時間が長くなった気がする
④バイブレーション機能が作動したように錯覚することが多い(幻想振動症候群)
⑤ついスマホの画面を見ながら他人と会話をしてしまう
⑥世間話がてら得意げに話していたことを「陰謀論だ」と言われる
⑦物忘れあるいは車の運転中のヒヤリハットが増えた
⑧直接人に会うのが億劫になった
⑨SNSに写真や動画を投稿する習慣がある
⑩首や肩が凝って仕方がない

0~3項目:依存していない
4~5項目:やや依存している
6~7項目:依存している
8~10項目:かなり依存している

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