健康な骨を維持するのに過度なダイエットは大敵だ。
「痩せすぎは骨に毒。食事制限による栄養不足もありますが、体重が軽くなりすぎると骨に適度な負荷がかからなくなります。骨には負荷をかけることで、その圧力に負けまいと、みずから強くなる性質があります。この性質が、体重が軽くなってしまうと作用しづらくなってしまうんです。極端な例になりますが、宇宙空間に長くいると骨粗しょう症になりやすくなります」
同様に適度な運動習慣も骨を強くする。とりわけ、人生前半戦の運動習慣がシニア世代の骨密度を左右するようで、
「骨密度のピークは20歳前後です。成長期は最も骨が強くなりますが、この時期に十分な栄養摂取と運動を行うことで骨密度の“貯金”を増やすことができます。中学高校で運動部に所属していると、毎日のように骨に負荷をかけることになるため骨密度は高まりやすい。一方で、文化部や帰宅部だと運動量の少なさに比例して骨への負荷も減少。骨密度も低くなる傾向があります。それだけ、適度な運動習慣は骨の健康に寄与しているのです」
どちらかといえば、有酸素運動よりも筋肉トレーニングが有効だ。
「ジョギングなど、できる運動を習慣づけるのが大事です。ただし、走ってばかりいるとヒザを悪くしてしまいますし、変なフォームが癖になっていると姿勢を悪くする原因にもなりかねません。そのため、スポーツジムで機材を用いた筋力トレーニングを推奨します。適度な負荷をかけることが大前提ですが、筋肉量が増えることで骨の形成促進に効果的なのです」
ちなみに、骨の再生力も年齢とともに低下。骨を強くする以前に、骨折しない意識を高めることも肝要となる。
「骨密度のピークと同じで、骨の再生能力も20歳前後を境に衰えてしまいます。およそ50代以降で骨密度は減少しやすくなる。どれだけ栄養や運動に気を遣っても、シニア世代が骨折するリスクは若者世代よりも高くなる。そのため、骨を強くするのと同時進行で『転倒対策』を講じましょう。転ぶ場所のほとんどが、家などの室内と言われています。電気コードやめくれた敷物に足をひっかけないように室内環境を整備するのはマスト。また、ふくらはぎやアキレス腱のストレッチなど、転ばない体づくりにも意識を向けてみましょう」
転ばぬ先の杖を用意するのに越したことはないようだ。
【「骨粗しょう症」チェックシート(12)】
セルフチェックで5点以上は近くの医療機関へGO!
(1)週に5回はファストフードを食べる 1点
(2)1日に350グラム以上の野菜を食べない 1点
(3)日中外に出る習慣がない 1点
(4)1日にカルシウムを600グラム以上摂取していない(牛乳なら60ミリリットル)1点
(5)毎日アルコールを飲む 1点
(6)喫煙習慣がある 1点
(7)毎日カフェイン飲料を2リットル以上飲む 2点
(8)学生時代に文化部あるいは帰宅部だった 2点
(9)女性で閉経している 3点
(10)過去に食事制限を伴うダイエットに成功している 3点
(11)周囲から背中が丸くなったと指摘を受けた 6点
(12)身長が縮んだような気がする 6点