第2次トランプ政権に怖いものなし「やりたい放題外交」が招く英・独・仏との軋轢

 先の米大統領選で、トランプ氏は激戦7州を全勝し、過半数の270人を大きく上回る312人の選挙人を獲得した。

 トランプ氏が2016年、2020年の大統領選挙を上回る票数を記録したことで、議会上院では共和党が過半数を奪還し、下院でも過半数を獲得する勢いで、この上ない最高の政治環境を手に入れた。また、トランプ氏は今回2期目であり、再選を意識することなく辣腕を振るえる立場にある。第2次政権では周囲を自らの信奉者で固め、やりたい放題できる環境が整いつつある。

 トランプ氏は、選挙戦の最中からウクライナや中東での戦争を早期に終結させる姿勢を見せているが、一方で貿易戦争を激化させていくことに迷いはない。自らをタリフマン(関税発動の請負人)と自任し、中国製品に対する関税を60%に引き上げると豪語する。関税発動を繰り返すことで米国の経済や雇用を守り抜く姿勢に徹することになるだろう。それによって中国も報復関税を仕掛けることが予想され、第2次米中貿易戦争は前回より激しいものになることは間違いない。

 また、欧州との亀裂も再び深まることだろう。トランプ氏はウクライナ支援の継続には懐疑的で、ウクライナはバイデン政権下のような形で軍事支援を受けることが難しくなる。そればかりか、ノーベル平和賞も視野に入れているトランプ氏は、ロシアがウクライナ東部を実効支配している現状での停戦をウクライナに迫る可能性があり、そうなればフランスやドイツ、英国など欧州諸国との軋轢は避けられない。

 トランプ氏は欧州の同盟国が十分な防衛費を払わないとロシアの脅威から守らないと発言するなど、欧州防衛にも否定的だ。

 トランプ節が対中国、ウクライナ情勢で炸裂することなり、世界はいっそう不安定化していくことになりそうだ。

(北島豊)

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