ウクライナ戦争でロシアに派兵し、米大統領選挙投票日に短距離弾道ミサイルを連発するなど、軍事プレゼンスを高め続ける北朝鮮。それと同時に存在感を強めているのが女子サッカーだ。北朝鮮の世代代表が連続して世界の頂点に立つという大躍進ぶりを見せているのだ。
「9月にコロンビアで行われたU20W杯で世界一になったかと思えば、今度は11月3日にドミニカ共和国で行われていたU17W杯でもまた世界を制したのです。しかもU20では決勝トーナメントでブラジル、アメリカに、決勝では日本に勝って優勝。U17でもスペインに勝利しての優勝と、きっちりと世界の強豪国を下して制覇したので、その実力は本物です」(スポーツライター)
韓国メディアによると、北朝鮮は国家プロジェクトとして2013年にサッカーの強化に着手。ピョンヤンに「平壌国際サッカー学校」というアカデミーを設立したのだが、そこに集められたサッカーエリートのうち4割が女子選手だという。とりわけ女子サッカーに力を入れてきたのだから、その成果が表れたということなのだろう。
「学校には複数の人工芝のグラウンドがあり、天候に左右されない屋内グラウンドも完備されています。全国から選ばれた選手には6カ月に1回テストがあり、失格したら地元に帰らせられるので、生き残り競争も激しい。さらに指導者を選抜して海外留学させるなどの強化をした結果、2017年に北朝鮮選手として初めてイタリアリーグ・セリエAデビューを果たした韓光成(ハン・グァンソン)らを生み出しています。彼は育成プロジェクトの1期生です」(同)
だたそうは言ってもやはり北朝鮮、置かれた状況は他国とは全く違う。10月に行われた男子W杯2次予選のアウェー戦を戦った北朝鮮代表は、試合が終わるとエコノミークラスで帰国。その際、経由した中国の空港では、カップラーメンにお湯を入れようとする選手が、給湯器の前で列を作っていた姿が目撃されている。そのハングリーさも強さの秘訣ということか。
(猫間滋)