日本人のおよそ8割が患者ないしは予備軍と言われているのが「歯周病」だ。01年にはギネスブックで「世界で最も蔓延している病気」にも認定。その罹患率は年齢を重ねるごとに上昇傾向にある。どれだけ平均寿命が延びようが、デンタルIQが低いと歯の健康寿命は短いまま。今すぐに口腔ケアを再確認するべし!
文字通り「歯周病菌」による感染症である。生まれたての赤ちゃんの口腔内には存在しないが、大半は生活の中で家族や友人から感染してみずからも感染源となる。宮城県大崎市にある「まつむら歯科クリニック」の松村賢院長が解説する。
「代表的なのはキスによる感染です。口腔内で生産された唾液を介して、歯周病に感染してしまいます。ただし、日常生活の中にも感染経路はたくさんあります。例えば複数人で大皿料理をシェアする時、取り箸を使わずに直箸を使うことによる他人の唾液との接触。同じコップやペットボトルでの回し飲み、串カツやチーズフォンデュの二度漬けにも同様のリスクがあります。そうはいっても、よほどの潔癖症でなければ、家族間で気にせずにやってしまう行為だと思います」
それでも、きちんと口腔内が清潔に保たれていれば大事にならないことがほとんどだ。しかし、毎日のケアを怠ってしまうと歯茎に炎症が起こる。
「ストレスや睡眠不足などで免疫力が低下すると、歯周病菌による炎症が起きやすくなります。よくある初期症状として、歯茎がプクプクと腫れることが挙げられる。歯と歯茎の間にある、歯周ポケットに細菌や膿が溜まっているのが原因です。歯ブラシで少し磨くだけで出血してしまうケースもあります。しかし痛みが出にくいので、この時点で自覚症状がないことも珍しくありません」
もっとも、混同してはならないのが「虫歯」だ。いずれも口腔内のメジャーな疾患ながら、進行具合が大きく異なる。
「虫歯の場合は、虫歯菌が歯の表面に付着した糖分を食べて排出した酸性の物質で歯のエナメル質を溶かしてしまいます。歯に穴を開けて、神経や血管にまで虫歯菌が侵入してしまうと耐えがたい痛みが生じる。顎の骨にまで炎症を広げて、顔全体が膨れ上がってしまうことも‥‥。一方、歯周病は歯周病菌による炎症に免疫力が抵抗することで、歯を支える骨にあたる『歯槽骨』を溶かしてしまいます。免疫の栄養として消費されているわけではなく、歯周病菌に侵される前に骨が退縮していくのです」
歯茎ばかりではなく、土台となる骨にも症状が現れるようだ。
「歯茎も下がってしまいます。この時点で中等度レベル。鏡で自分の口の中を見た時に、想定しているよりも歯が長く見える場合は歯周病がかなり進行している可能性が高い。ちなみに、虫歯にならない人は歯周病になりやすい傾向があります。口の中には大きく虫歯菌と歯周病菌が混在しているのですが、そのいずれかのうち数的優位になっている方にかかりやすい。『歯周病の患者さんに虫歯が少ない』という統計データもあります。ただし、虫歯と歯周病の両方になる人もいるので〝絶対〟ではありません」
口腔ケアを怠る理由は1つもないのだ。
【「歯周病」チェックシート⑭】
セルフチェックで5点以上なら近くの医療機関へGO!
①朝昼晩の食後に歯磨きをする習慣がない 1点
②虫歯になったことがない 1点
③喫煙習慣がある 1点
④口内炎ができやすい 1点
⑤起床時に口が乾いている 1点
⑥3カ月以内に歯医者に行った記憶がない 1点
⑦人に口臭が臭いと言われた 2点
⑧歯茎から出血がある 2点
⑨鏡でみる自分の歯が長くなった気がする 2点
⑩歯に食べ物がよく挟まる 2点
⑪デンタルフロスや歯間ブラシを使用する習慣がない 5点
⑫歯茎が腫れている 5点
⑬糖尿病である 5点
⑭前歯に付着した歯石が目視できる 5点
(つづく)