「巨額詐欺男」がハマった「オンナとカネ」無間地獄(5)マカオ夜総会で美女3人と肉弾戦

 それでも、怪しげな黒崎氏との距離を、齋藤氏は縮めていく。両者を結びつけたのは「カネとオンナ」だった。齋藤氏が続ける。

「アスクレピオスの丸紅案件への出資者を紹介してもらったりして、お得意さんになっていきました。そして、07年春頃から黒崎はスイスのプライベートバンク(PB)のエージェントをしており、私の個人資産を『スイスに飛ばして、グローバルな投資を』と、PBの口座開設を勧めてくるようになったのです」

 オフショアにあるPBなら日本の課税を逃れられる。そこで資金を運用した方が、日本よりも高利を受け取れるという寸法だ。

「そこで、黒崎に伴われて香港に窓口があるスイスのPBまで行って、口座を開設しました。問題は送金でした。一般の金融機関を使えば、面倒な手順を踏まねばならないのですが、黒崎は地下銀行を使うというのです。開設後、程なくして送金の機会がやってきました。黒崎が『数年で10倍になる投資先がある』と誘ってきたのです」(齋藤氏)

 齋藤氏は言われるがまま、現ナマの5億円を都内のホテルへとみずから運んだ。その一室で黒崎氏と共に、銀行名が入った札束の帯封を解き、輪ゴムで束ね直した。どこから送金されたのかを一目でわからないようにするためなのだろう。そして、黒崎氏はその5億円を持ち去っていったという。通常の感覚なら、黒崎氏の行動を疑うべきだ。

 が、黒崎氏の目くらましは巧妙だった。一緒に香港に行った際に、黒崎氏は齋藤氏をマカオへと誘い、「夜総会」へと向かった。一見、ナイトクラブだが、その個室でドンチャン騒ぎをして、最終的にはホステスと一夜を共にする。甘い誘惑で骨抜きにされた齋藤氏が一夜の出来事を告白する。

「店内に、10人ほどの女性がズラリと並んでいるのです。『好きな女を選んでください』と黒崎がささやいてくるのですが、もったいぶって『好みの娘はいないなあ』と答えると、また10人ほどの女性が入れ替わりで現れる。それを3回ほど繰り返して3人を選んだら、あとは宿泊先のホテルで1対3の肉弾戦でした。黒崎は、その手の遊びが好きで、彼なりの接待ということなのでしょう。地下銀行経由の送金のたびに、黒崎は手数料として20%を持っていったのですから、いい稼ぎになったはずです」

 だが、単なる接待というわけではなさそうなのだ。日本に戻ってからも黒崎氏の〝女体攻勢〟は続いた。

「1度目は六本木ヒルズレジデンスのゲストルームでのパーティーでした。男女4〜5人ずつ集まりましたが、この時は黒崎の誘いを女性陣が断り、肉弾戦とはならなかった。そのリベンジもあったのでしょう。08年の私の誕生日に高級ホテルのザ・ペニンシェラ東京の一室で、パーティーを開いてくれたのです。ここでは、黒崎が王様ゲームに持ち込み、最終的には見知らぬ男女がくんずほぐれつ状態に‥‥。すでに会社は破綻目前で、こんなパーティーにすがるしかなかったのです。そして、黒崎にしてみれば、互いに秘密を共有することで、逃げられない関係にしたかったのかもしれません」(齋藤氏)

齋藤栄功(さいとう・しげのり)1962年、長野県生まれ。86年に中央大学法学部を卒業後、山一證券に入社。同社の自主廃業後に信用組合、外資系証券会社を経て、医療経営コンサル会社「アスクレピオス」を創業する。08年に詐欺とインサイダー取引容疑で逮捕され、その後に懲役15年の判決を受けて長野刑務所に服役。22年に仮釈放された。

(つづく)

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