経済・外交・裏金問題に先が見えない…「石破茂首相」にさっそく浮上した「これだけの不安」

 先の自民党総裁選で、石破茂氏が高市早苗氏を大逆転で破り、新総裁に決まった瞬間、会場に軽いどよめきが起きた。その理由を自民党幹部がこう述懐する。

「1回目の投票で高市氏が、国会議員票で圧勝すると見られていた小泉進次郎氏に3人差と迫る72票を獲得したときは、新総裁は高市氏で決まりと誰もが思った」

 というのも、高市氏は1回目の投票では議員票は石破氏と同程度の40~50票というのがもっぱらの予想だったからだ。ところがフタを開けてみれば72票。一方の石破氏は予想通りの46票。そして、石破氏有利と見られていた党員票で2人は互角だった。これで勝負ありと誰もが思ったという。

 ところが、決戦投票では議員票で石破氏が高市氏の173票を上回る189票を獲得し、地方票もわずかに上回って大逆転。どよめきが起きたのも当然かもしれない。自民党幹部の1人は、逆転の理由をこう明かす。

「前日、麻生太郎氏が高市氏につくと漏らし、それが報道された。それに対し、麻生氏とキングメーカーを争う菅義偉氏が後ろ盾となっていた小泉氏の議員票の多くが決戦投票では石破氏に流れ、さらに、岸田文雄氏が石破氏についたとも囁かれた。そのため、林芳正氏の議員票38票の多くも石破氏に流れたと見ている」

 また、立憲民主党の代表に中道路線の野田佳彦氏が返り咲いたことも要因の1つだという。

「野田氏の選挙参謀の核には政界の寝業師・小沢一郎氏が就くらしい。これでは11月にも行われると見られる総選挙、そして来夏の参院選において、タカ派論調が強い高市氏が首相では不安と思った自民党国会議員が多かった。その不安議員が石破氏に流れたということでは。つまり、今度の石破氏勝利には岸田・菅ラインと野田・小沢ラインの2つの要素が大きく作用したと言える」(前出・党幹部)

 もっとも、「石破首相」には不安も少なくないという。経済アナリストはこう懸念する。

「石破氏が一時唱えていた金融所得課税については多くの国民が不安視している。石破氏は批判が多いため、やや軌道修正し、『いまの貯蓄から投資へという流れは一層加速させていく』と語り、かつ岸田政権が行ってきた数々の経済政策を踏襲する姿勢を強調しているが、得意分野の防衛などとは異なり経済政策が不安だ。財務省のいいなりになって増税路線に走るのではという見方もある」

 外交や内政に関しても募る不安を政治部記者が解説する。

「岸田氏と異なり、石破氏には外相の経験がないこともあり、米中ロ、北朝鮮外交をどうするかが見えない。また、裏金問題や旧統一教会問題も完全に終わっていない。これらの問題にどう決着をつけるのか。それと、何度も総裁選に出馬しては負け続けていただけに、新鮮味に欠けるという指摘もあります」

 いずれにせよ、「石破内閣」がスタートダッシュでどう動くのか、日本はもちろん、世界が注視している。

(田村建光)

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