【中国】結婚できない3000万人の「余剰男」と性犯罪に政府が手こずる「一人っ子政策」のツケ

 1970年代末に始まった「一人っ子政策」により半世紀が経過する今、いびつな男女人口比が深刻な社会問題となっている中国。どうせ一人しか産めないのであれば、女児より男児を、という傾向が強まった結果、80年代に出生した中国人女性100人に対し、男性の数は136人。つまり単純計算で36人は一生結婚できず、このままの状況が続けば、今後30年で結婚できない男性は3000万人に上るとの試算もあるというから驚きだ。

 中国の現状に詳しいジャーナリストの話。

「中国では、そういう男性たちを“余剰男”を呼んでいますが、一人っ子政策をスタートした時点でこうなることは本来、予測できたはず。一人っ子政策が本格化した80年代以降、超音波検査による胎児の性別診断技術が発達し、特に男児を望む傾向が強かった農村地域では妊娠中に胎児が女児と判明した場合、人工中絶するケースが相次ぎましたからね。そこで中国政府は2002年、胎児の性別診断や男女の産み分けを理由にした中絶を禁止したのですが、時すでに遅し。結局は15年に一人っ子政策の廃止を公表し、男児の出生比率は減少し始めたものの、ツケが今になって“余剰男”という形で表れてしまったわけです」

 ただ、それが単なる男性の結婚難というのであれば、さほど深刻な問題ではないのだが、ここ数年、その余剰男らによる、女性や子供の誘拐や人身売買、性犯罪などが急増。それが国家を揺るがす大きな社会問題になっているというのだ。

「噂では、一人っ子政策が廃止されてからもなお、その習慣が残った地域も少なくなかったといわれる。特に地方の農村部には圧倒的な数の余剰男がいるとされ、性犯罪が後を絶たないと伝えられています」(同)

 そんな中で先ごろ、香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が、中国南西部の雲南省の大理ペー族自治州民政局が州内で暮らす未婚男性(35~55歳)3万3000人を対象に、政府斡旋方式と自由恋愛方式により、婚姻問題解決に全面的に乗り出していく方針を明らかにしたことを報じた。

 報道によれば、同地域の地域共産主義青年団委員会や婦女連合会などの組織が「公益仲人」や婚姻サービスプラットフォームなどの役割を担い、州の施設や公園などを活用して未婚男性に出会いの場所を提供。年に十数回にわたりデートイベントなどを開催してパートナー探しの手伝いをするとしている。

「ただ、今の中国は経済の失速で失業率が急上昇。将来に対する不安も拭えず、独身を選択したり結婚を先送りしたりする女性も増えていて、結婚も出生も減少傾向にあります。そんな状況下で旧態依然としたイベントをやってどれほどの効果が期待できるのか。農村部では今もなお、『嫁を買う』というのが日常的な慣用語で、『人身売買』同然の行為が行われているとされますからね。50年間のツケはあまりにも大きかったという一言に尽きます」(同)

 はたして、余剰男問題の解決の糸口はあるのだろうか。

(灯倫太郎)

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