ハマス最高指導者・ハニヤ氏殺害で“顔にドロ”イラン激怒でタガが外れた戦火拡大の絶望

 パリで平和の祭典であるオリンピックが開催されている最中、世界を震撼させるニュースが飛び込んできた。イスラエルと抗戦を続けているイスラム組織ハマスの最高指導者、ハニヤ氏が、あろうことかイランの新大統領宣誓式に出席するために訪れていた同国首都テヘランで、7月31日未明に暗殺されたというのである。

 イランの革命防衛隊の発表によれば、ハニヤ氏はテヘラン北部にある建物に宿泊していたが、滞在地が空爆され、護衛1人とともに死亡したという。

「ハニヤ氏はガザ地区の難民キャンプで生まれ、2006年のパレスチナにおける議会選挙でハマスが最大勢力となった際、暫定政府の首相に就任した人物。ただ、その後、アッバス議長率いるファタハと袂を分かち、実効支配したハマスのトップとして君臨することになった。しかし、その後イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化したことで、身の安全を図るためにカタールなどを拠点に活動を続けてきたと言われます」(外報部記者)

 当然、ハマスの後ろ盾であるイランにはたびたび訪れており、直近では5月にヘリコプター墜落事故で死亡したライシ前大統領の葬儀にも参列。そして今回は、7月に就任したペゼシュキアン新大統領の就任式出席のためテヘランを訪れ、被害に遭ったことになる。

「現段階ではまだイスラエルからの声明は出ていません。ただ、イスラエルはかねてから、ハニヤ氏ほか幹部すべての暗殺を掲げていることから、事件に関与した可能性は極めて高い。さらに問題なのがイランで、自国に招いていた要人が襲われて亡くなるという事態に、泥水を浴びせられた思いであることは間違いないでしょう。ハマスは無論のこと、イランの最高指導者ハメネイ師も早々に声明を出し、『イスラエルが厳しい処罰を下す根拠を与えたとし、イランの首都で起きた殺害への報復はイランの義務である』としている。血で血を洗う戦闘が激化することは避けられないでしょうね」(同)

 衝撃事件を受け、ブリンケン米国務長官は記者会見で、ハニヤ氏暗殺に関する質問には直接答えなかったものの、米国の関与は否定。一方、オースティン国防長官はハニヤ氏殺害に関連し「戦争が必然とは思わない。外交の余地と機会は常にあると思うし、当事者たちがそうした機会を追求することを期待する」と述べているが、そう簡単にいくとは思えない。

「この殺害事件については、ロシア政府も即座に反応を示し、ペスコフ報道官は『攻撃を強く非難する』としています。というのも、もともとロシアとハマスとは独自の関係を築いており、近年は特にハマスの後ろ盾となっているイランとの間で、ウクライナ情勢を巡り”米国憎し”という共通の思惑から、政治や軍事的な関係を強化していますからね。パレスチナ寄りの立場をとり続けている中国もしかりで、この殺害がイスラエルによるものだとすると、当然、アメリカにも火種が飛び火することは必至。あえて五輪の最中を狙っての犯行なのか、偶然だったのかはわかりませんが、当面は一触即発の状態が続くことになるでしょう」(同)

 五輪にはイスラエルの選手も多く参加しているが、間違っても世界の注目が集まるパリで大規模テロなどが起こらないことを祈るばかりだ。

(灯倫太郎)

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