死んだペットが800万円で…中国で問われる「クローン再生ビジネス」の倫理感

「『死者の復活』ビジネスが急拡大 生成AIで肖像権侵害、中国が野放し」。読売新聞が伝えた7月10日付の記事のタイトルだ。内容は、中国で生成AIによって故人の動画を作成するビジネスが流行っているのだが、親族や親しい人ならまだともかく、ネットの宣伝ではオードリー・ヘップバーンやアメリカのバスケットボールのスターだったコービー・ブライアントの写真を掲げる業者が跋扈していて、やりたい放題だというもの。

 日本でも19年のNHK紅白で「AI美空ひばり」を登場させた時には、倫理面から賛否の声が上がった。ちなみに読売新聞が紹介している例では、完成まで1週間ほどで、費用は4000元(約8万8000円)。中国事情に詳しいジャーナリストはこう言う。

「中国ではAIでなく、実際に死者を復活させるビジネスが行われています。ペットのクローンです。中国ではコロナ禍で若者を中心にペットが大ブームとなり、23年のペット産業の市場規模は約5兆2500億円規模とされ、日本国内の飲料や人材派遣の市場規模を上回るレベルです。さすがに中国でも人間のクローンは禁止されていますが、ペットのクローンに規制はなく、依頼が殺到しているそうです」

 中国でペットのクローンサービスを提供する会社の日本代理店のHPを見ると、犬をクローンで蘇らせるのに約800万円、猫は約720万円、クローンを作るための体細胞保存が1年間約4万8000円で、5年間は約19万2000円とある。ペットのほか、馬やオオカミのクローンも成功しているのだという。

 話をディープフェイクによる不老不死に戻せば、読売記事にあるように、どうも対象は乱発されているらしい。

「私人以外の有名人では、作家や思想家、宗教者のアバターをAIで製作するというビジネスもあれば、子どもの成長の記録を残すためのアバター製作を謳うものもあります。また自身の意志を後世に伝えたいと、自分のアバターを残すという需要もあるといいます」(前出・ジャーナリスト)

 身近なものに例えて言えば、著名人をたくさん降霊させていた某宗教団体、子どもの運動会をホームビデオで撮影する親の姿、自分史を遺す高齢者といったところか。

 日本の漫画「キングダム」は中国の秦の始皇帝が中国を統一する話だが、その秦の始皇帝も不老不死にハマった人物。だから中国らしいと言えば言えなくもない話なのだが…。

(猫間滋)

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