「スキー場が買えるのは日本だけ」長野・白馬村を“地価上昇率1位”に押し上げた理由が怖い

 この1年で最も地価が上がったのは、なぜか長野県の白馬村だった。国税庁が7月に発表した路線価では、白馬村が32.1%も上昇、1平方メートル当たり3万7000円だという。

「理由はひとえに外国資本によるリゾート地の買い漁りです。ここ数年で白馬村にはアメリカやシンガポールなどの資本による高級ホテルの進出が続いています。同じ長野県では、新潟県との県境の妙高・斑尾高原にもシンガポール資本が進出中で、曰く『スキー場が買えるのは日本だけ』ということです」(経済ジャーナリスト)

 他国であれば値段が高く、外資の参入には壁が設けられているが、日本は安くて規制も緩いということで、リゾート地そのものが買われているのだ。安い国になったものだ。

 外資によるリゾート地漁りと言えば、しばらく前までは北海道のニセコ、トマム、夕張などがターゲットにされてきたが、こちらは一段落。現在は、日本の各地で次々と安くて優良な物件の掘り起こしがなされているところだろう。

 もっとも外資だから一概に悪いというわけではなく、お金が落ちて雇用が拡大すれば、地元にとってもメリットは大きい。だが一方で、相手が外国人だけに、いつどうなるか分からないという不安がつまとうのも現実だ。事実、路線価の発表と同じ日、外資の撤退がニュースになった。トマムの「星野リゾートトマム」のオーナーだった中国の多業種コングロマリットが手を引き、同ホテルが売却されると発表されたのだ。

「SNSでは名前が星野リゾートながら、金主は中国企業だったことに驚きの声が上がっています。この中国企業は儲かることなら何にでも手を出すといった具合で商売の手を広げていましたが、中国は恒大グループの経営危機に見られるように、不動産バブルが弾けて不動産不況の只中。同社も資産を整理中で、トマムのホテルも売りに出したわけです」(同)

 ところでこのホテル、15年前の購入時は180億円で、今回の売却価格が408億円というから、結果的に転売で大きく儲けたことになる。このホテルの場合、トマムを高級リゾート地として外国人にも知らしめたシンボルだったために高値転売も可能になったわけだが、同じように本国の都合でいつ撤退してもおかしくないのが外資である。

 日本各地で安く買い漁ったは良いが、開発途中で撤退なんてことになれば、地元はひたすら迷惑でしかない。

(猫間滋)

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