テレビ黄金時代「バカウケ視聴率王」BEST20(1)萩本欽一のロックシンガーのような躍動感

 テレビ離れが加速する現在、「30%超え」「お化け番組」は、もはや死語に近い。その点、昭和はテレビが一家に一台の時代である。チャンネル権を巡る兄弟ゲンカはザラに発生し、時にオヤジも巻き込んだ大騒動に発展するほど、誰もがテレビに熱狂した。お茶の間を沸かせた「視聴率王」を令和に蘇らせよう!

 数字のなーい奴ぁ、俺んとこへ来い! 恒例1000人アンケートによる「もう一度見たい 昭和の視聴率王」ランキングの結果は下記の通り。堂々の1位は、レギュラー番組の視聴率を足すと100%を超えるため〝視聴率100%男〟と呼ばれた芸能界の大将・萩本欽一(83)が選ばれた。

 動きが斬新だったと作家の亀和田武氏は語る。

「坂上二郎さんとのコンビ、コント55号の軽快な動きは驚きました。コント開始早々、欽ちゃんが舞台の袖から猛スピードで登場してその勢いのまま二郎さんを蹴飛ばしたり。二郎さんの『飛びます、飛びます』の踊りのキレもさることながら、とにかく欽ちゃんは舞台の端から端へと縦横無尽に動き回る。ギャグそのものよりも、後にロックシンガーたちがコンサートのステージ上で会場を沸かせたように、体の動かし方のセンスと躍動感で笑わせるんです。独特の〝欽ちゃん走り〟もワクワクさせましたね」

 言葉は通じなくても面白さは動きで伝わる─チャップリンを尊敬していた欽ちゃんイズムだろう。

 タレントの徳光正行氏は萩本との初対面を回想する。

「四谷の居酒屋あぶさんでお見かけして、これは挨拶しなきゃと思って、急遽、友達に欽ちゃん役をやってもらったんです。『父がお世話になってる徳光です』『はいダメ。間が悪い。やり直し』とか(笑)。そんな練習を30分ぐらいやって、意を決して挨拶に行ったら『あ、どうも』と全然普通で。オーディションや稽古じゃないのでまったく厳しくなかったなぁ」

 所作のすべてを計算し尽くしている萩本の笑い。それだけに障子を開ける動作だけで何時間もダメ出しを食らった欽ちゃんファミリーは多かった。

 なぜNGなのかは聞いてはいけない。必要以上に稽古を繰り返させる、その裏には「運の神様にその様子をしっかりと見てもらい認めさせよう」という萩本独自の〝運の法則〟があるのだという。

 さらに萩本と番組について徳光氏は熱く語る。

「『オールスター家族対抗歌合戦』(フジテレビ系)は一般の人を日曜8時に歌わせていました。しかも全員顔出し。今考えるとすごい番組だった。そういう素人いじりといいますか、困っている人を徹底的に追い込んで笑いに転換させるのがうまい。二郎さん、斎藤清六さん(76)、見栄晴さん(57)もみんなそうですよね。勝俣州和さん(59)が欽ちゃんの家に行った時に、ゴキブリが出てきて思わず叩いて殺したところ、欽ちゃんが激怒。『このゴキブリは毎日〇時〇分にリビングに出てきて、僕と会話して友達だったのに。お前は友達を殺すのか?』と。欽ちゃんが亡くなられたら、脳みそは人工知能に生かしてほしい」

 なんで、そーなるの?

■視聴率王TOP20

1位:萩本欽一(557票)「24時間テレビ」の出演ギャラ、最初に提示された額を「安すぎ」と拒否。どんどん釣り上げて局側が「これ以上ムリです」と言ったところで「全部寄付して」と引き受けた。「これ都市伝説じゃなくて実話です」 (徳光氏)

2位:ザ・ドリフターズ(524票)いかりや長介より3つ年上の荒井注は74年に脱退。その後、天知茂の「江戸川乱歩の美女シリーズ」に出演するなど演技派の役者に転身。静岡・伊東でカラオケボックスの経営を目論むも機材がドアより大きくて断念

3位:ハナ肇とクレージーキャッツ(504票)60年代を代表する伝説のコミックバンド。70年代にドリフ全盛期になると、主要メンバーは俳優としてソロで活躍した。リーダーのハナ肇も「新春かくし芸大会」の銅像役の人としか認識していない層が増えていった

4位:大橋巨泉(473票)トレードマークの黒メガネは実はレンズなしだった。普段は近眼で眼鏡使用だが、テレビ出演ではコンタクトを着用し、わざわざ伊達メガネをかけるのが巨泉流。ライトに反射してレンズが光ることを気にしてのことだった

5位:三波伸介(419票)ハゲヅラにチョビ髭姿の三波が校長役を務めた「凸凹大学校」。人気コーナーはお題を絵とジェスチャーで表現する「エスチャー」で、ずうとるび・江藤博利が毎度爆笑を取っていた。82年、三波の急逝により番組は終了

6位:あのねのね(366票)フジテレビの「ものまね王座決定戦」の初代司会。が、真骨頂を見られたのは年1度程度、タレントがものまねをしない一般視聴者参加の「発表!日本ものまね大賞」。原田伸郎が天才的なシロウトいじりを発揮した

7位:徳光和夫(351票)「NTV紅白歌のベストテン」「ズームイン!!朝!」など日テレの看板番組の司会。78年から続く「24時間テレビ」には欠かせない顔。競馬&ボートレースに消えた金はナント10億円。水原一平級の筋金入りのギャンブラー

8位:福留功男(315票)「アメリカ横断ウルトラクイズ」の現地司会。その派生番組「全国高等学校クイズ選手権」ではプロデューサー的な立場で番組制作に携わった。アニメ「美味しんぼ」では中松警部の声を違和感なく演じる芸達者でもあった

9位:鈴木健二(296票)「歴史への招待」「クイズ面白ゼミナール」など博覧強記のよどみないしゃべりで〝NHKの視聴率男〟と呼ばれた。82年出版の著書「気くばりのすすめ」はミリオンセラーに。兄は映画監督の鈴木清順。今年3月に95歳で死去

10位:ジェリー藤尾(245票)戦後の歌舞伎町を拠点とした愚連隊の元用心棒で、武勇伝も数多いジェリーが妻・渡辺友子と共に、バラエティー番組「笑って!笑って!!60分」の司会という意外性! 小松政夫の「ズンズンズンズン~、小松の大親分」も流行った

11位:愛川欽也(241票)/12位:久米宏(237票)/13位:桂三枝(184票)/14位:笑福亭鶴瓶(172票)/15位:前田武彦(134票)/16位:伊東四朗(119票)/17位:小松政夫(103票)/18位:土居まさる(97票)/19位:せんだみつお(83票)/20位:高島忠夫(80票)

(つづく)

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