松本人志だけではない!「バツ1」「天然」を流行らせた大物芸人とは

「人志松本のすべらない話」はフジテレビのキラーコンテンツだ。特番、DVDともにロングセラー。この「すべらない」というのは、松本が生んだ言葉である。すべる=ウケないの逆が、すべらない。つまり、笑いを取れるという意味だ。今や広く浸透しているが、松本が多用するまでは、笑いに直結した用いられ方はしなかった。

 ルーツがおなじみなのは「最初はグー」。生みの親は志村けん。昭和のおばけ番組だった「8時だョ!全員集合」(TBS系)の公開放送後、いつものように行きつけの店で盛り上がった。支払いをジャンケンで決めることになったとき、みんなが酔っ払ってタイミングが合わないため、志村が「じゃあ、みんな手を上げて、最初はグーだよ。最初はグー、ジャンケンポン!」と号令をかけたら、まとまりがついた。以降、同番組で罰ゲームを決める際などに多用し、視聴者に広まっていった。

「天然(ボケ)」をお笑い用語として使用し始めたのは“欽ちゃん”こと萩本欽一。明石家さんまに付いていたジミー大西が、欽ちゃんファミリーに加わることになったが、純朴で常識が通用せず台詞も覚えられないため、欽ちゃんはさんまに“返品”した。その際、「あの子は天然」と表現したことで、のちに「天然ボケ」という言葉が誕生した。

 そのさんまは、女優・大竹しのぶとの離婚会見で、額に小さく「×」と書いて、みずからを「バツ1」と名づけた。こうして、離婚を「バツ」と表現することが広まった。

 松本はそれらをはるかにしのぐ言葉をブレイクさせている。「イラっとする」「ドM」「噛む」「絡む」「逆ギレ」「グダグダ」「さむい」「ドヤ顔」「ヘコむ」「ヘタレ」「カブる」「キャラ」ほか、枚挙にいとまがない。今では普通に使っているこれらの言葉も、本を正せば松本人志につながるのである。

(北村ともこ)

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