入団1年目から優先起用され、2年目から不動のショートレギュラーとして活躍したレジェンドは、将来の監督候補としてコーチ入りの打診を受けていた可能性も十分にある。しかし、鳥谷は現役続行の意思を表明したのである。
「現在のタイガースのショートは誰かと聞かれて、即答できる人が世間にどれだけいるでしょうか。おそらく、多くの人が誰?となると思います。木浪や北條がショートで出場していますが、バリバリ活躍してはおらず、絶対的なレギュラーは不在です。今シーズンの起用法に鳥谷自身、ヤキモキした気持ちを抱えていたに違いありません。意地もあり、他球団に移ってでも現役を続行したい気持ちなのでしょう」(中田氏)
事実、新人ながらショートの開幕スタメンを勝ち取った木浪は打率2割7分6厘とまずまずの成績だが、守備に関しては失策13と12球団一のお粗末ぶりだ。2番手に控える北條も失策数11と代わり映えのしない若虎の力不足は一目瞭然。
シーズン前に「もう一度ショートで勝負したい」と矢野監督に訴えながらも若手と同じ土俵で戦わせてもらえない鳥谷が、他球団に活躍の場を求めるのも無理からぬことかもしれない。だが、全盛期とはいえない今の鳥谷を欲しがる球団ははたしてあるのだろうか。
「中日が鳥谷調査に名乗り出るコメントを出しましたが、本命はロッテでしょう。鳥谷がロッテの井口監督とツーカーの仲なのは有名な話です。大学時代にプロアマ交流の一環で参加したダイエーの春季キャンプで井口監督と出会い、練習方法や野球観に感銘を受けた。そこで培われた師弟関係はプロ入り後も続き、オフには自主トレを一緒にしてきました。結局、断念しましたが、鳥谷が海外FA権を行使してメジャー挑戦を表明したのも井口監督の影響が大きかったんです。ロッテには05年の優勝時に三遊間コンビを組んだ盟友・今岡2軍監督もいます」(在阪スポーツ紙記者)
たとえ井口監督の肝煎りでロッテに移籍しても、代打以上の出番は与えられないかもしれない。それでも鳥谷は、退団を嘆くファンのために来季も挑戦を続けたいのだろう。自身も現役晩年にトレード放出された田淵幸一氏が、鳥谷の去就について語る。
「引退するか他球団でやるかどうかは本人が決めること。私は毎年、沖縄のキャンプで『トリ、1年でも長く現役を続けろよ』と伝えるようにしています。野球人にとって、現役を長く続けることはいちばんの幸せなんですから」
縦じまのユニホームを脱ぐことは濃厚だが、来季も現役選手として鳥谷がグラウンドで躍動する姿を、ファンは待ち望んでいる。