阪神ファンの間からは「鳥谷はスタメンで打席に4打席立ってこそ結果が出るタイプ」と、今季の代打メインの起用方法に「力が発揮できなくてもしょうがない。どうして糸井や福留は優遇して鳥谷は勝負させてもらえないのか」と同情の声がちらほら。その一方で、このタイミングが鳥谷の選手としての引き際だという意見も出ている。
かつて「ベンチがアホやから野球がでけへん」と首脳陣批判を口にして、みずから引退の口火を切ったとされる江本孟紀氏は言う。
「今の阪神は、若手を差し置いて鳥谷を使う状況ではないですよね。力的にも若手以上の成績を残せるとは思えません。チームを引っ張ってきた鳥谷が引退することでチームの士気にかかわるなんて声が聞こえますが、影響は少ないと思います。プロ野球の世界においてチームを引っ張るというのは、声を出すとか練習を誰よりも熱心に取り組むといった精神的なものではなくて、打席に立って結果を残すことです。特に今シーズンの鳥谷は結果を残せていません。阪神の戦力としては潮時なのかもしませんね」
85年に日本一チームを率いた名将・吉田義男氏もほぼ同調する。
「鳥谷に戦力外の話がいくのは勝負の世界だからしょうがない。代打で起用されてきたのも矢野監督の考えがあってのこと。結果も出てないし、こればかりは競争だから外野がとやかく口出しできることではありません。ただ、鳥谷ほどの功労者なのだから、シーズンが終わってから発表してもよかったんじゃないかな」
今季の鳥谷は打率2割5厘、得点圏打率に至っては0割2分9厘(9月5日時点)と、さんざんな成績だ。主戦場ではない代打での起用が主ではあるが、年俸4億円にして、全盛期の数字と比べると打棒の衰えは明らかで寂しいかぎり。
「阪神退団の意思を公にした8月31日には、鳥谷は代打でネクストバッターズサークルに控えていたのに、途中で中谷将大にスイッチされた。前の打者が出塁したら鳥谷を起用する予定だったようですが、かつて代打の神様と言われた八木裕や桧山進次郎のように、代打としては絶対的な地位を築くことはできませんでした」(在阪スポーツ紙記者)
皮肉にも、鳥谷の代わりに出場した中谷は試合を決定づける勝ち越しのホームランを放ち、功労者の進退を象徴づけるハイライトを演出することに。
「功労者といえども、プロは成績でしか評価されません。かつての王さん、長嶋さんでさえも、全盛期の数字を出せなくなって引退しています。もしかすると鳥谷自身もチームに貢献できていない自分にじくじたる思いを感じているかもしれません。功労者の晩節を変に汚すよりも、惜しまれながら引退したほうが本人の今後のキャリアにもいい影響が出るでしょう。そんな花道を球団が用意したようにも見えますけどね」(江本氏)