フジ以外の局も、ただ指をくわえて見ていたわけではない。奇想天外とも思える着想で逆襲に出るのだ。04年に漫画家よしながふみが手がける男女逆転の「大奥」の連載が始まると、TBSは満を持して10年に映画化。柴咲コウ(42)が8代将軍・吉宗を演じて20億円超えの大ヒットを飛ばすや、12年には多部未華子(34)が3代将軍・家光役の連ドラ「大奥~誕生~」を制作。さらに同年暮れには、このドラマの30年後を描いた映画「大奥~永遠~」(松竹)が公開され、菅野美穂が次から次へと男を食いまくる肉食系の綱吉を熱演して、大きな注目を集めた。
「これまで脚本家の宮藤官九郎と組んで『池袋ウエストゲートパーク』や『タイガー&ドラゴン』など、ヒットを飛ばしてきた磯山晶プロデューサーは『ミスターマガジン』で自身の漫画連載を持っていたこともあるほどの漫画好き。現代のジェンダー社会を先取りするような男女逆転の作品は『大奥』の歴史に新たな一ページを刻みました」(佐々木氏)
しかし、これらの成功を忸怩たる思いで眺めていたのがNHKである。
「漫画連載が始まった当初、NHKでも企画が挙がっていた。ところが、ドラマ化の話がTBSで進んでいることを知って断念しました。しかし21年に原作が完結したことを受けて、最初から最後までをドラマ化したい、そんな思いから昨年、2クールにわたる全21話の超大作を制作することが決まりました」(佐々木氏)
23年1月にスタートしたSeason1では、吉宗役を冨永愛(41)が演じた。その威厳あふれる暴れん坊将軍ぶりや、性に奔放な綱吉役の仲里依紗(34)の熱演に、多くの視聴者から称賛の声が上がったのである。
「もともと、予算がある上に、セットや衣装は大河ドラマなどの時代劇を再利用できますからね。その分、キャスティングやロケにお金をかけることも可能でしょう」(秋本氏)
10月からのSeason2でも松下奈緒(38)、安達祐実(42)、瀧内公美(34)、岸井ゆきの(31)など、多士済々の女優陣が集結。中でも最大の悪役・一橋(徳川)治済役の仲間由紀恵(44)の怪演ぶりには肝を冷やす視聴者が続出した。ある意味、去年の大河ドラマ「どうする家康」よりも話題になったと言っても過言ではないだろう。
こうして振り返ってみると、各局で数多くの作品が制作され、多数の女優が出演してきた「大奥」。フジの連ドラとしては約20年ぶりに復活した令和版について佐々木氏は、
「NHKほど攻められないでしょうけど、ピュアでハートフルな『大奥』を期待したいです」
と、エールを送る。
果たして、大奥ドラマの“本家”は、爪跡を残すことができるのか。
(つづく)