能登半島地震「直接死」の要因か 日本家屋を全壊させる「キラーパルス」の恐怖

 政府は11日、元日に石川県能登地方を襲ったマグネチュード7を超える大規模地震を激甚災害「本激」に指定した。今回の地震では、約4メートル隆起した地点が確認されることなどから、大規模な地殻変動が起きた能登半島北側の活断層帯が連動し、強い地震を引き起こした可能性が指摘されている。

 石川県では死者が200人を超え、うち198人が建物倒壊や津波などによる「直接死」で、これは04年の新潟県中越地震や16年の熊本地震よりも多い。その要因の一つに「キラーパルス」という地震波が影響しているという。

 地震・災害問題に詳しいジャーナリストが解説する。

「地震動の周期(揺れが1往復する時間)には、0.5秒以下の『極短周期』、0.5~1.0秒の『短周期』、1.0~2.0秒の『やや短周期』、2.0~5.0秒の『やや長周期』、そして5.0秒以上の『長周期』などがありますが、一般の住家に多い木造建築物は、周期1秒から2秒程度の『やや短周期』の地震動が最も影響を与えやすい、つまり倒壊しやすいとされ、これが『キラーパルス(=危険な波動)』と呼ばれるものなのです」

 現段階で、亡くなった人たちの死因はまだ具体的に発表されていないが、輪島市の坂口茂市長は3日の会見で、「倒壊した家屋での圧死が感覚として多い」と説明。被災地を視察している専門家らも「家屋倒壊による死者がほとんどである可能性が高く、キラーパルスによる被害が大きかったことが推察される」としている。

「2016年4月に発生した熊本地震の際にもキラーパルスが観測され、全壊8667棟を含む20万棟以上の建物が破損しました。これは昨年2月に発生し5万人の犠牲者を出したトルコ・シリア地震も同様で、この時もやはり、周期1秒程度のキラーパルスが中低層のビルを崩壊させたと指摘されました。地震波は断層の位置、地盤によっても揺れ方が変わってきますし、建物の構造でも影響を受ける大きさが異なります。同じ地域でも、全壊したり一部損壊でまぬかれたりするのはそうした理由です」(同)

 とはいえ、地震発生を予知することが不可能である以上、キラーパルスから身を守るためには、耐震補強や耐震住宅へ建て替える以外に方法はないが、さりとて金銭的に容易ではない。結局、人間は圧倒的な自然の前ではなす術がないということなのか。

(灯倫太郎)

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