【元ヤクザ異色対談第2弾】司法書士・甲村柳市×弁護士・諸橋仁智(2)メルカリでアカウント停止

ーー話を戻しますが、諸橋先生は事務所を問題なく借りられたんですよね?

諸橋 私の場合は、地元の不動産屋さんとゴルフに行ったりして、つながりがあったんです。私のことを理解してもらっているから、問題なく賃貸契約を結べました。車も正規ディーラーから買ったことがなく、知人の販売店から購入していたから、問題にされたことがないんですよ。

甲村 なるほど。顔が見える関係なら問題にされないか。確かに、私も地元の岡山なら、何も支障なく生きていけるからね。そうは言っても、今ではネット上で契約なんてザラにあるわけだから、何かしら諸橋さんだって、不利益をこうむっているんじゃない?

諸橋 うーん、あったかなぁ‥‥。あっ、フリマアプリ「メルカリ」でアカウントが停止されました。大した支障はなかったので忘れていましたが、悪用したわけでもないし、理由を聞いても教えてくれない。

甲村 民法にある「契約自由の原則」ってやつだね。契約するもしないも、事業者が決められる。

諸橋 ちょうど元ヤクザということを明かしたあとだったので、経歴がひっかかったんだと思います。あっ、もうひとつありましたよ!

甲村 結構あるじゃないですか(笑)。

諸橋 クレジットカードを持つことはできているんですが、僕が事業主としてクレジットカード会社に加盟することができなかったんです。だから、私が飲食店を開いたとしても、クレジット払いはできない、現金払いのみの店ということになっちゃう。幸い弁護士費用のクレジット決済は、まだ一般的になっていないから、すぐには問題にならないけど、キャッシュレスの時代ですからね。将来的には困るかも‥‥。

甲村 私の事務所はクレジット払いができるんだけど、「カードで払う」という人は、やはりほとんどいない。一応、QRコード決済のペイペイ払いも用意してあるけど、こちらも使う機会がない。法律家はともかく、キャッシュレス決済は当たり前になっているわけだから、元ヤクザだからという理由で排除されたのでは、どんな商売を始めてもうまくいかない。

(つづく)

甲村柳市(こうむら・りゅういち)1972年岡山県生まれ。司法書士法人東亜国際合同法務事務所代表。21歳頃に五代目山口組傘下組織に入門。05年に引退するも、公務執行妨害罪で服役する。その独居房で試験勉強をスタートさせ、出所後に宅建、行政書士試験は一発合格を果たし、司法書士試験には18年に合格。その破天荒な半生を昨年、著書「元ヤクザ、司法書士への道」(集英社インターナショナル)にまとめた

諸橋仁智(もろはし・よしとも)1976年福島県生まれ。諸橋法律事務所弁護士。大学受験の浪人中に覚醒剤に手を出し、2浪の末に大学に入るもヤクザの道へ。覚醒剤使用を続け、精神病院へ強制入院、そして逮捕される。組から破門されたのを機に、猛勉強を開始。13年に司法試験に合格。それまでのいきさつを描いた「元ヤクザ弁護士 ヤクザのバッジを外して、弁護士バッジをつけました」(彩図社)が話題に

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