【元ヤクザ異色対談第2弾】司法書士・甲村柳市×弁護士・諸橋仁智(1)マンションを借りられない!

 任俠界から法曹界へ––。特異な転身を遂げた2人が半生を振り返る著書を、たまたま同時期に発表。昨年、本誌の企画で初めて顔を合わせた。ところが、まだ語らねばならないことがあった。そこで、新春に「異色対談」第2弾を敢行! みずから背負った「元ヤクザ」という“十字架”の重さを語り尽くした。

ーー今年もよろしくお願いします。24年の抱負をお聞きする前に、まず昨年を振り返っていただけますか?

諸橋仁智(以下、諸橋) 弁護士としては4月に独立して、11月には業務拡大のために事務所移転と、想像していた以上にスムーズに進みました。最初に自分の過去を明かしたのは、丸山ゴンザレスさんのユーチューブ(22年4月)だったんですが、昨年5月に本(「元ヤクザ弁護士」彩図社)を出したことで、これまで会ったことがなかった業種の人たちに出会うきっかけになった。多くの刺激をもらえて、自分にとっては財産になりました。特に、甲村先生と出会えたのはうれしかったですね。先に「元ヤクザの法律家」として報道されていて、私が経歴を明かす契機になった人なので。

甲村柳市(以下、甲村) 自分の場合は過去を隠してなかったからね。私も本(「元ヤクザ、司法書士への道」集英社インターナショナル)を6月に出したんだけど、最初は諸橋さんの本と発売日が近くてびっくりしたが、結果的にはこうやっていい関係を築けた。本当に人とのつながりは大事だなと痛感した1年だった。おかげで、念願の東京事務所も出せたしね。

ーーおふたりとも飛躍の1年だったようで何よりです。ところで、いまだ「元ヤクザ」という経歴が、ハンディキャップになっているとお聞きしたのですが‥‥。

甲村 そう、一昨年はディーラーで車が買えなかったことがあって、このことは頭に来たので著書にも書いたけど、それとまったく同じことがマンションでも起きた。何とか都内に事務所は借りられて、11月に開業までこぎつけたんだけど、その東京事務所で仕事をする時に、近くに住居用マンションを借りようとしているが、どうにもダメ。で、今も東京ではホテル暮らしですよ。

諸橋 それはお金がかかりますよね。借りられないというのは、賃貸保証会社が断ってくるんですか?

甲村 いや、保証会社についてはまったく問題ないんです。結局は大家がイヤがっているようでね‥‥。

諸橋 今は名前をネットで検索しますからね。「うわっ、元ヤクザじゃん」「しかも、法律家!」「揉めたらダブルで面倒くさそう」ってなりますよ。自分が大家だったとしても、断っちゃうかもしれません(笑)。

甲村 本当にネットは言いたい放題だから。ちょっと前に、ヤフーニュースで諸橋さんの記事が取り上げられていたから読んでいたら、記事の後のコメント欄にいい加減なことばかり書いてあって、他人事ながら久しぶりに怒りが込み上げてきましたよ(笑)。

諸橋 そんな隅々まで読んでもらっていたとは‥‥。私はヤフコメを読まないようにしています。それでも目に入ってきちゃって、私へのアンチコメントに「共感する」を押した人が7000人もいたりして、かなり落ち込みますよ(笑)。

(つづく)

甲村柳市(こうむら・りゅういち)1972年岡山県生まれ。司法書士法人東亜国際合同法務事務所代表。21歳頃に五代目山口組傘下組織に入門。05年に引退するも、公務執行妨害罪で服役する。その独居房で試験勉強をスタートさせ、出所後に宅建、行政書士試験は一発合格を果たし、司法書士試験には18年に合格。その破天荒な半生を昨年、著書「元ヤクザ、司法書士への道」(集英社インターナショナル)にまとめた

諸橋仁智(もろはし・よしとも)1976年福島県生まれ。諸橋法律事務所弁護士。大学受験の浪人中に覚醒剤に手を出し、2浪の末に大学に入るもヤクザの道へ。覚醒剤使用を続け、精神病院へ強制入院、そして逮捕される。組から破門されたのを機に、猛勉強を開始。13年に司法試験に合格。それまでのいきさつを描いた「元ヤクザ弁護士 ヤクザのバッジを外して、弁護士バッジをつけました」(彩図社)が話題に

ライフ