提供座席数は世界3位、JAL機接触事故の背景に羽田空港の過密ダイヤ

 1月2日夜にあった羽田空港のJAL機と海保航空機の接触事故。8日午前0時には、事故で閉鎖していたC滑走路の運用が再開されたが、今なお事故の正確な原因は判然としないままだ。国の運輸安全委員会では、07年から22年までの過去16年間で32件の同じような「滑走路誤侵入」の事例が報告されているが、いずれの場合も交信でのヒューマンエラーで、管制官が着陸やり直しの「ゴーアラウンド」で回避している。

 それが今回は回避されなかったから大事故になったわけだが、こういった事情を聞けば、重大事故と背中合わせで空港の運営が行われていることが分かる。そこで、今回の事故の原因究明とは別に、もともと羽田空港の離発着は世界でもトップレベルの混雑ぶりなので、いつかはこうした事故が起こってもおかしくなかったという指摘も出始めている。

「22年の羽田空港の提供座席数は5269万で、世界第3位の混雑ぶりとされています。月でおよそ3万8000回もの発着があって、着陸には9キロの間隔を空け、離陸は2分以上の間隔を設けるという基準がありますが、山手線のダイヤより混雑していることになります」(全国紙記者)

 そもそも首都圏の空港としては、もともと羽田と成田は、成田が78年に供用開始されると国内線と国際線で棲み分けられるようになったが、羽田と成田の容量不足が90年代に言われ、10年に羽田の第4滑走路の運営を始めてから事情が変わる。さらに20年の東京五輪開催が決まると、羽田は「再国際化」された。すると昼間時間帯を中心に、最大で1.7倍もの増便となった。重要インフラだけに、その負荷の増加たるや想像するに難くない。

「そのように羽田と成田だけでは滑走路をちょっと増やしたくらいでは、いつか容量が不足することは予測されていたわけです。そこで2000年には政府が『首都圏第3空港調整検討会』を立ち上げて、首都圏第3の空港の必要性が議論されました。ところが10年の第4滑走路運用開始で当面の需要に応えられるようになるとお茶を濁され、本格的な議論は後回しになりました。そこにはもちろん空港は騒音やもしもの時に大惨事となる迷惑施設なので、候補地探しが困難という政治的な理由があります」(同)

 だが現在は、より多くのインバウンドの獲得が国家戦略にもなっている。ハブ空港の国際的生き残り競争の意味でも、首都圏の空港不足は今一度、真剣に議論されなければいけない問題だ。だから今回の事故をきっかけに、原因究明の先の課題にも向き合ってみてはどうだろうか。

(猫間滋)

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