ヤクルト5位指名に見た14球団「ファーム・リーグ」の問題点

 来季からプロ野球はファームが14球団となる。その影響だろう。今秋のドラフト会議で、この「ファーム・リーグ」に参入する新潟アルビレックスBCの所属選手の指名で、「過去最高」が出た。

「伊藤琉偉内野手がヤクルトから5位指名を受けました。独立リーグでは強打者で知られています。走攻守の3拍子が揃っており、肩も強く、外野守備もこなせます。打席での雰囲気が山田哲人に近いというか」(地元メディア)

 年齢は21歳、東京農業大学を2年で中退し、独立リーグからのプロ入りを目指していた。強肩堅守、かつ8月と9月の打率が3割9分7厘。ルートインBCリーグの野手部門で月間MVPも獲得した。新潟での活躍を聞くと、よくこの順位まで残っていたものだと思えてくる。

「独立リーグは投手のレベルが高い年とそうでない年があるので、バッターの成績を鵜呑みにできないところもあるんです。でも、伊藤に関しては各球団がチェックしていました。逸材です」(球界関係者)

 この伊藤についてはドラフト前、複数の球団が「育成で指名したいが…」と新潟側に打診していたそうだ。しかし、新潟は来シーズンからNPBファーム戦に参画することも決まっている。一軍戦に出場できない育成枠での指名なら、独立リーグに残るのと変わりがない。ということで、「育成枠での指名なら、入団拒否も…」と伝えていたそうだ。

「育成枠拒否」が伊藤の意思なのかどうかは不明だが、新潟側の気持ちは分かる。ファーム戦に参入する以上、主軸選手は喪失したくない。

「来季からファームのみに2球団が参入します。でも、その2球団とファーム球団間のやり取りなど、詳細はまだ決まっていません。もし、NPBファーム球団が、参画する2球団の所属選手の誰かがほしいと思ったら、トレードは可能なのか。参入する2球団側が選手不足に陥った場合、ほかの独立リーグ選手を臨時補充しても良いのかなど…」(前出・同)

 ファーム参入球団を巡るルール作成が急がれる。今季のヤクルトは山田が不振で、リードオフマンの塩見泰隆を欠く試合も多かった。伊藤を本当に必要としていたのは間違いないが、仮に育成での指名となっていたら…。ファーム参入の話にも影響が出ていたかもしれない。ドラフト5位指名がファーム・リーグの問題点を浮き彫りにする形となった。

(飯山満/スポーツライター)

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