中国はなぜ「中立」から「パレスチナ支持」に舵を切ったのか? 魑魅魍魎の舞台裏

「両国の政治的な相互信頼は深化しており、戦略的協力は緊密だ」

 中国を訪れていたロシアのプーチン大統領が18日、習近平主席と北京で首脳会談を行い、両国の連携強化による、ロ中関係の結束を改めて強調した。

 会談ではウクライナ問題だけでなく、中東情勢についても協議が交わされたようだが、そんな中、イスラエルとの関係強化に動いていた中国が突然、反イスラエルに舵を切ったことで、西側が大きく揺れている。中東情勢に詳しい軍事ジャーナリストが説明する。

「習近平は今年6月、イスラエルのネタニヤフ首相に国賓訪問を要請し、実は今月末にも北京で首脳会談が行われる予定だったんです。ところが、7日にハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃があり、イスラエル側がガザ地区を空襲。それでも9日の時点ではまだ、中国外交部報道官は『中国はイスラエルとパレスチナの友人』と発言。あくまでも『中立』という立場を打ち出していました。しかし、13日にサウジアラビアとイラン両国首脳が会談し、サウジが『イスラエルとの和解は凍結する』と表明。その瞬間から中国は一転、反イスラエルに方針転換し始めたというわけです」

 今回の襲撃に関しては否定しているものの、これまでイランがハマスを支援してきたことは周知の事実。そしてこの3月、長年対立してきたサウジとイランの歴史的和解を仲介した習近平氏にとって、イランとの関係は何をおいても重視したい課題だ。

「中国は、米国との中東政策交渉において、イランと協力関係にあることを重要なカードだと考えています。むろん、その背景には、パレスチナに対し明確な支持を打ち出すことで、アラブ世界における中国の立場を強化したいという狙いもある。ただ、ここでもうひとつ重要なのがサウジとイランとの関係で、もしサウジがパレスチナ問題をこのままにした状態でイスラエルと国交を結ぶことになれば、当然パレスチナは激怒するはず。そして、イランとサウジの関係も再び緊張状態に戻ってしまう。習近平の外交戦略は本来、武力行使で血を流すことなく、経済で相手国を取り込むということ。そのためには、中東全体に戦火が拡大するなど、絶対にあってはならない。だからこそ、イランとサウジを和解させたわけですが、今回のガザ地区問題の成り行きいかんでは、習近平の目論見が崩れる可能性もあり、予断を許さない状況になってきています」(同)

 さらに、話をややこしくしているのが、米バイデン大統領の動きだ。18日、イスラエルに到着したバイデン氏は、ネタニヤフ首相と軍事支援や人道支援などについて会談を行ったが、17日に起きたガザの病院爆撃で多数の死者が出たことについて、「病院爆発はイスラエルによるものではないようだ」と述べ、イスラエルに対する軍事的支援を表明。結局この言動が、中東問題に火に油を注ぐことになってしまった。

「バイデンとしては大統領選のため、国内のユダヤ系住民にアピールしなければならず、イスラエル支援は必至でしょう。一方、習近平はサウジとイランの首脳会談を受け、反イスラエルを明確に打ち出した。悲しいかな、中東の勢力図は当事国の思惑をよそに、今後の中米覇権の象徴となるでしょうね。いずれにせよ、血を流さない解決を祈るばかりです」(同)

 世界が米中に振り回されるこの構図は、いつまで続くのだろうか。

(灯倫太郎)

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