遠い中東の戦火の火の粉が今にも飛び火しかねないのが、極東・アジアだ。ロシアと蜜月関係の北朝鮮の軍事プレゼンスは増大。さらには中国が台湾進攻に踏み切るリスクも高まっている。
ハマスのイスラエル襲撃では、アメリカを中心とした西側諸国はイスラエル支持。これを見て、中ロはダンマリを決め込むが、はやばやとハマス支持を打ち出したのが北朝鮮だった。そして実はこれが韓国で大問題になっているのだという。「コリア・レポート」編集長の辺真一氏が語る。
「北朝鮮は10日の『労働新聞』でイスラエルを批判、ハマス支持を打ち出しました。もちろんイスラエルのバックには天敵のアメリカが控えているからですが、もともと北朝鮮はハマスに武器支援を行っていたという経緯もあるからです。すると今度は、韓国国内ではハマスのイスラエル襲撃と同じことを北朝鮮が韓国に対して仕掛けてくるのではと大騒ぎになっているのです。それは地理的に似た条件にあることと、ハマスが北朝鮮の武器でイスラエルの襲撃に成功したためです」
ハマスは世界でも屈指の強固なイスラエルの防空システムを突破した。
「韓国はこれを真似た『韓国版アイアンドーム』を29年までに約3300億円かけて配備する予定でした。それが北朝鮮製の8万円台のミサイルで破られてしまったわけですから、北朝鮮がこの成功例から学んで同じ襲撃を行うんじゃないかというわけです」(辺氏)
イスラエルのネタニヤフ首相は予備役30万人を動員して地上戦を準備。ハマスの「せん滅」を宣言した。圧倒的に武力優勢のイスラエル軍が短期間でハマスを鎮圧する、というのが大方の見方だが、ことはそう単純ではない。ハマス支持のイランやシリアの出方によっては第五次中東戦争に突入することも空論ではない状況だ。そして、この事態こそ北朝鮮にとっては願ってもないことだという。
「9月に金正恩(39)とプーチン大統領(71)の首脳会談を終えて、北朝鮮とロシアの国境付近ではさっそく、北朝鮮の、ロシアへの武器供与が確認されています。平たく言うと、北朝鮮は火事場泥棒のようなもの。ウクライナでも中東でもどこでも、世界で紛争が起これば武器商人としては儲かってしかたがないというわけです」(辺氏)
ほくそ笑む将軍様の顔が浮かんでくるようだ。
仮にハマスの成功を見て韓国に一発カマすようなことがあれば、当然、アメリカも黙ってはいないのだが、
「もしそんなことがあれば、中国はここぞとばかりに台湾に侵攻するかも」(辺氏)
もとより中国による台湾侵攻は、日増しにリスクが高まっている。9月には台湾海峡で過去最多の103機の中国軍機が出没。12日にもアメリカ軍哨戒機が台湾海峡を飛行中に、中国人民軍は戦闘機を飛ばしたばかりだ。
猶予の時間は非常に限られていると語るのは、軍事評論家の井上和彦氏だ。
「CIAのバーンズ長官(67)は今年2月の講演で、習近平国家主席が27年までの台湾侵攻の準備を軍に命じたというインテリジェンス情報を明らかしています。10月4日には、木原稔防衛相(54)とアメリカのオースティン国防長官(70)がワシントンで会談し、アメリカ製巡航ミサイルのトマホークを1年前倒しして25年に配備することで合意しました。これは、中国の動きを見越してのことでしょう。来年は3月に台湾総統選、11月にアメリカ大統領選があって政治的空白が生じる。ましてや中東で政情不安が高まれば、台湾有事のタイムリミットはさらに前倒しにな可能性もあるでしょう」
ハマスの襲撃がアジアにまで飛び火。朝鮮半島、台湾で火の手が上がって日本が戦争の炎に包まれるという、最悪のシナリオももはや絵空事ではないのだ。