「人気リゾート地を手に入れたいハゲタカが放火」マウイ島火災に陰謀説が続出する背景とは

 現地時間の8月8日にかつてハワイ王国の首都として知られる歴史的な町、マウイ島のラハイナの大規模火災は、発生から9時間後にはラハイナ全体が焼き尽くされ、114人の死亡(現地時間18日現在)が確認されている。

 ところが、この大惨事の最中、X(旧Twitter)やTiktokなどのSNSを通じ、耳を疑うような「陰謀説」が拡散され、被害者らを困惑させている。

「AP通信などによると、デマの内容は、リゾート開発で金もうけを企む一部富裕層が、灰になった土地を購入するため、レーザービームを使って山火事を起こしたというもの。いまだにすべての死亡者が特定できず、被害の全貌が明らかになっていない中でのこうしたフェイクニュース拡大に、関係者も怒りを通り越して呆れているようです」(全国紙記者)

 実は、こうした陰謀説が噴出する背景には、コロナ禍以降のマウイ島人気があるのだという。ハワイの現状に詳しいトラベルライターが明かす。

「マウイ島には高級リゾートホテルやコンドミニアムが数多くあり、リゾート開発も進んでいますが、州の規制が厳しいこともあり、この地域で新築の建造物を建てるには時間や手間がかかります。そのため、中古住宅が高額で取引きされてきた、という経緯があるんです。ところが、コロナ禍以降、アメリカ本土の富裕層が、オアフ島より自然が多く、ハワイ島よりも近いマウイ島を別荘地として選ぶようになり、住宅価格がさらに急上昇していたのです」

 今回の火事で家を失い、仕事を失った住民は数多い。しかも、保険に加入してない人も少なくないと言われており、今後、家を建て直そうにも費用が捻出できないといったケースが続出し、その結果、土地を売るしかなくなってしまうのではないか、とも見られているのだ。

「不謹慎なようですが、投資家たちにとっては最大のチャンスだということです。ただ、ハワイ州知事は会見で被災地の買い上げを『略奪行為』と批判し、『山火事により被害を受けた不動産の売却を一時停止する選択肢を検討している』と発表。ハゲタカたちが群がる状況に警告を発しました。今後は、家も仕事もなくした人々を、州政府がどう援助していくのかに軸足が置かれていくはずですが、ハゲタカたちもこのまま黙って引き下がるはずもないでしょうから、事態の推移が注目されているのです」(前出・ライター)

 州政府の発表によれば、今回の山火事で焼失した建物は2200以上、うち86%が住宅だという。1日も早い復旧とともに、政府による被災者の支援が待たれるのである。

(灯倫太郎)

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