佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」麦茶にそうめん…夏の定番商品は「夏の終わりが一番安い」の法則

 7月下旬になると、今シーズンの水着バーゲンもピークになる。若い頃、「トゥナイト2」(テレビ朝日系)の経済リポーターをやっている時に、何回も水着売り場に取材に出かけた。ところが、バーゲン会場の女性を見ていると、ちょっと不思議な感想を持った。はやりものの水着を楽しむような感じの人があまりに少なかったからだ。

 まあ、定価より5割も安く買えることもあるからいいのかもしれないけど、安く買っても、その水着を着る機会は多くないはず。若い女性にとって賢い水着の買い方は、シーズンの最初に定価で買って、6月くらいから思い切り夏を楽しんだ後、8月後半にネットオークションで売ることだな、とも思った。

 もしも買った時の半額で売れれば、最新の流行水着をシーズンの最初に半額で買ったのと同じになる。同じ半額で買うにしても、シーズンを思い切り楽しんだ後と、シーズンの終わりにせいぜい1、2度着て手元に残す─。どちらが賢いかは明らかだろう。

 一方、私がシーズンの終わりに買う商品もある。例えばペットボトルのアイスコーヒー、水出し麦茶、そうめん、乾めん、液体の蚊取り線香、エアコン掃除のスプレーなどだ。ちょっと驚かれるかもしれないが、今年飲んでいるアイスコーヒーや水出し麦茶は、去年の夏に買ったものである。

 夏に売れ行きがアップする商品ほど、夏の終わりに1年間で最も安い価格で売られる特売商品になることも多い。メーカーは夏の商品は今年のうちに売り切ってしまいたいと考える。在庫を抱えて倉庫代を払うより、売っ払いたいのだ。

 また、新商品が思ったほど売れなかったり、猛暑の長期予報がハズれたりすると、大量の在庫を抱えることになるから、より安くなる。

 実は今年使っている液体蚊取り線香は、数年前に通常のバーゲン価格の3分の1くらいで買ったものだ。定番商品でもパッケージの変更が予定されていたり、仕様が変わったりすると安くなることもある。

 さらに高級ジュース、高級めんつゆ、時には中元用に梱包された高級なハム、ソーセージなども安く売られる。百貨店などでは半額程度になることも珍しくない。化粧箱に入っているのでハムだけを取り出し、箱は捨てて帰ってくればいい。

 シーズンの終わりに驚くほど安く買ったものを家の中に1年間ほど置いておき、来シーズン使う。飲み物などは保管もしやすいため箱買いしている。

 1年間も家に置いておくのか? と思われるかもしれないが、乾めんでさえ、味が落ちたと感じたことはない。夏だけではなく、冬に暖かいそうめん、にゅうめんを食べたくなることもあるので重宝している。

 もちろん、食べ物、飲み物などは賞味期限を確認するのだが、たいてい、来シーズンの真ん中までとか、来年の冬までだったりするのが通例だ。メーカー側も1年間の保存は問題ないと考えているのだろう。

 特に最近のように、食料品などを中心に物の価格が値上がりするのなら、今年のうちに来年の商品を安く買うのは、決してバカげたことではないと思う。来年は値上げされている可能性も少なくないからだ。

 今年は涼しくなったら、エアコンの値段もチェックしようと思っている。コロナ禍の3年間、エアコンなど白物家電の需要が高まり、店頭での販売価格は相当高くなった。しかし、その反動で去年から売れ行きは落ちている。そろそろ在庫を抱えたメーカーから爆安エアコンが出てきてもいい頃である。

 夏の定番商品は夏の終わりに賢く買う。

 そうめんの味も無糖のアイスコーヒーも、来年でも味はほぼそのまま。古くもならない。それが流行の水着とは違うところなのだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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