都市圏ごとの世界人口ランキングを毎年発表する「デモグラフィア」によると、22年の1位の東京—横浜(3773万人)に次ぐ2位だったのがインドネシアの首都ジャカルタの3376万人。だが、その世界を代表するメガシティが現在水没の危機に瀕している。
08年に世界銀行は「適切な防御策が取られなければ、25年には海水は海岸から5キロ内陸にある大統領府まで達し、市内の歴史地区以北は完全に水没する」との報告書を公表。さすがにこれは最悪のシナリオだったが、それでも50年までに市内北部の95%が水没するとの予測を出す機関もある。
同国のバスキ公共事業・国民住宅相も今年2月、「首都ジャカルタが毎年12〜18㎝ずつ地盤沈下している」とコメント。近い将来の水没がもはや避けられない状況だ。
「もともとジャカルタは上水道の整備が不十分で、多くの家庭や工場が地下水を生活用水や工業用水として利用しています。その結果、局地的な地盤沈下を招き、街の北部ではこの半世紀だけで4m以上沈下している地域もあります。しかも、現在も地下水なしでは水の供給が難しく、解決策が見いだせない状況です」(インドネシア在住ライター)
この問題に対し、インドネシア政府が下した決断は首都移転。昨年1月、ジャカルタから北東に約2000㎞離れたボルネオ島東部のヌサンタラを24年から新首都にすることを発表している。
「ただし、現状では建物やインフラの整備が追いついておらず、45年までの20年計画で段階的に首都機能を移す見通しです」(同)
ちなみに首都移転を行った国は20世紀以降だけでもブラジルや東西統一後のドイツ、ミャンマーなど複数のケースがあるが、水没による移転はインドネシアが初めて。理由が理由のため、ジャカルタが今後も経済の中心地であり続けることは難しいとの指摘も多い。
「多くの企業が45年までに新首都に移転すると見られており、日系企業に関しても同様です。ジャカルタは首都から地方都市に格下げとなり、水没化も進むので今後数十年で緩やかに衰退していく可能性が高いと思われます」(同)
世界有数の巨大都市も自然の前にはあらがう術がなかったようだ。